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限られた支援をどう届けるか。変わりはじめる公的支援。「こどもまんなか」を実現するために。
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#子育て #手続・申請
- writer : GDX TIMES編集部
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「こどもまんなか社会」を掲げる国の方針のもと、子育て支援は拡充しつつも、ひとり親向け施策は条件分岐の複雑さや自治体差で“取りこぼし”が生じやすい現実があります。重要なのは「自分は使えるのか」を迷わず進める情報設計とデジタル化。限られた支援を確実に届ける体制づくりが急務です。
ひとり親家庭向け 支援の現状と課題
ひとり親家庭に特化した施策は数としては多くありません。しかし、児童扶養手当や養育費確保支援など“少数精鋭”の制度は生活に直結する重要な支えです。だからこそ「制度を知っていても申請にたどり着けない」「自治体によって条件や手続きが違いわかりづらい」など理由での取りこぼしは、暮らしそのものを直撃し、あってはなりません。
児童扶養手当という柱
代表的な支援は児童扶養手当です。所得制限や扶養人数による加算など複雑な条件がありますが、制度改正により2024年11月分(2025年1月支給)からは所得上限引き上げ、第3子以降の加算額増額(第2子と同額)が始まっています。これにより、新たに対象となる世帯が広がりました。
条件分岐の煩雑さ
さまざまなひとり親家庭支援があっても「収入」「扶養家族の数」「同居・事実婚か否か」といった条件が複雑に絡み、自治体ごとに申請書式や手続きも異なります。困窮している家庭ほど、対象かどうかを窓口に相談できる時間も足りず、時間も夜に限られ、情報弱者になってしまいます。制度そのものはあるのに“活用につながらない”構造が課題です。
国の「ひとり親向け」施策の最新トピックス
国は、ひとり親家庭向け支援を強化するため、経済的支援・養育費の確保・学び直しや就業支援を中心に新たな施策を打ち出しています。直近で注目すべき主要トピックを整理します。
「法定養育費」省令案が公表
法務省は、法定養育費の額を子ども1人当たり月額2万円と定めること、および先取特権の上限を子ども1人当たり月額8万円とすることを盛り込んだ省令案を公表しました。9月上旬からパブリックコメントを開始しており、施行は遅くとも2026年5月までを見込んでいます。※いずれも案段階です。
2026年度 概算要求での新規施策
こども家庭庁の令和8年度概算要求では、ひとり親家庭を含む子どもの学びを支える支援策が強化されました。大学等受験料補助(最大5万3,000万円)、模擬試験受験料 補助(高校3年生等:1人あたり最大8,000円、中学3年生:1人あたり最大6,000円)、受験生(中3・高3)の学習支援などが新規で盛り込まれています。
児童扶養手当の拡充が反映中
すでに施行された児童扶養手当の拡充も、この一年で大きなトピックです。所得制限の上限引き上げや第3子以降の加算額増額がスタートし、これまで対象外だった世帯にも支援が広がっています。制度の少なさを補う意味で、基幹支援の強化は着実に進んでいます。
こうした新しい動きは、ひとり親家庭への支援をより多重的に支援し、国全体で子どもの育ちや学習環境を、家庭の状況に左右されず、子どもの権利を守るための動きです。国の大きな方向性は、「子育て・生活支援」、「就業支援」、「養育費確保等支援」、「経済的支援」の4本柱であり、経済的な下支え、養育費の確保、就業・学び直しの後押し――これらの 強化が益々進んでいます。
補強する自治体の取り組み
自治体では、国の制度を補完するかたちで独自施策を展開しています。養育費保証や費用補助、就労支援、子どもの学習支援など、多様なアプローチが広がっています。
札幌市|強制執行費用まで対象
札幌市は、公正証書作成や保証料に加え、強制執行申立てに必要な費用も補助しています。未払い養育費への実効性を高める取り組みとして注目されます。
出典:札幌市|ひとり親家庭等養育費確保支援事業
https://kosodate.city.sapporo.jp/mokuteki/money/hitorioya/10962.html
練馬区|家庭訪問型の学習支援
練馬区では、児童扶養手当受給世帯等の小1〜中2を対象に、学習支援員が自宅を訪問し学習を支援しています。学習習慣を身につけ、基礎学力の定着を図ることに加え、お子さんや保護者の方の悩み相談にも応じています。
出展:練馬区|ひとり親家庭向け家庭訪問型学習支援事業
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/jinken/hitorioya/hitorioya_gakusyu.html
府中市|多面的な費用補助
府中市では、公正証書作成費用、養育費保証料、ADR利用費用などを幅広く補助しています。養育費の取り決めから履行までの一連のプロセスを支援する設計になっています。
出典:府中市|養育費確保支援事業補助金
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kosodate/shussan/hitorioya-sekatushien/youikuhi.html
川崎市|高校通学交通費の助成
川崎市では、児童扶養手当受給世帯、または川崎市のひとり親医療費助成の対象世帯にいる高校生等の電車やバスなどの公共交通機関の通学費を助成しています。県内、県外を問わず、全日制だけでなく、定時制や通信制の高等学校なども対象です。
出展:川崎市|ひとり親家庭等高校生等通学交通費助成金
https://www.city.kawasaki.jp/450/page/0000104938.html
羽曳野市|企業と連携した保証モデル
大阪府羽曳野市では、保証会社と連携し、養育費を保証する独自モデルを導入しました。自治体が主体的に金融・保険の仕組みを組み合わせ、ひとり親支援に活かす先進事例です。
出典:羽曳野市|養育費の履行確保支援事業
https://www.city.habikino.lg.jp/soshiki/kodomoegao/kodomoseisaku/youikuhinorikoukakuhosien/index.html
沖縄県|就労チャレンジ事業
沖縄県は、ひとり親家庭のお試し就労をサポートする「ひとり親就労チャレンジ事業」を開始しました。就労コーディネーターによる就労試行マッチング相談や、就労前に訓練期間を設け複数企業で職場訓練を経験することで、 ミスマッチによる就労後の軽減を図ることを目的とした事業です。必要に応じて、マッチング相談時等に子どもの預かり支援を行います。
出典:沖縄県| ひとり親就労チャレンジ事業
https://www.pref.okinawa.jp/kyoiku/kosodate/1008226/1008243/1036266.html
沖縄県のように就労支援を重視する自治体もあれば、養育費確保を制度化する自治体もあるなど、取り組みの幅は広がっています。ただし、申請書式や要件は自治体ごとに異なるため、「自分の地域ではどうか」がわかりにくいのが現実です。制度の有無だけでなく、地域差そのものが“取りこぼし”につながりやすい点は共通の課題といえます。
使える支援を取りこぼさない設計を
ひとり親家庭向け支援は対象が限られるからこそ、代表的な制度(児童扶養手当など)が実際に活用できるかどうかは、生活の安定に直結します。また、自治体ごとに工夫された様々な支援も必要な人に届いてこその支援です。
国の方向性は誰ひとり取り残さない、誰もが使える形。続けられる仕組みです。利用者が制度のことを詳しく知らなくても自分の状況から“わかる・進める”に置き換える情報設計とデジタル化こそ、今後の自治体DXに求められています。