PPP・PFI|官民連携によって民間の創意工夫を公共サービスの設計~運用に活かす手法

PPP・PFI|官民連携によって民間の創意工夫を公共サービス の設計~運用に活かす手法

「PPP」は、官民のパートナーシップによる公共サービスの提供手法です。「PFI」は、PPPの代表的な手法のひとつで、民間の資金とノウハウを活用して、公共施設などの設計、建設、整備や維持管理および運営を行います。ここでは、日本におけるPPP推進の歴史、PFI事業の形態や期待される効果などについて紹介します。

PPPとは

PPP概念図
PPP概念図

これまで行政組織が主体となって提供してきた公共サービスを、利用者である市民にとって、より満足度の高いものとするための新たな手法としてPPPが注目されるようになりました。

「PPP」は官民連携事業の総称

PPP(Public Private Partnership)とは、行政(官)と企業・大学・市民などの組織(民)が連携し、それぞれの強みを活かすことによって、より効率的で有効な公共サービスの提供を実現し、地域の価値や住民満足度の最大化を図る取り組みです。地域全体の効用を高めるために、「人材」「モノ」「資金」「情報」などの経営資源を活用した市民サービスを提供します。

PPPの導入によって、これまでサービスの受け手であった民間組織が、サービスを提供する側にまわることによって、より満足度の高い市民サービスを最適なコストで実現することによって、活力のある豊かな地域社会づくりを目指します。

PPP、後述するPFIともに、設備・施設運用のスキームというイメージが強いですが、対象は施設に限定されていません。行政サービスのDX化においても同様のことができる、求められているという前提でお読みください。

「PPP」の事業形態

PPPの事業形態
PPPの事業形態

PPPの手法を活用した事業の実施にあたって、民間組織との連携のあり方や行政による関与の度合いによって、以下のような事業形態があります。

直営型

公共サービスの提供にともなう施設(インフラ)整備や運営、維持管理などの業務を、行政組織が雇用する人材によって直接実施します。サービス提供のために必要となる人材を長期安定的に雇用するための新たな制度を設けたり、必要なスキルを持つ人材を民間からの人材派遣によって雇用することで、効率的なサービス提供に努めます。

アウトソーシング型

公共サービスの提供にともなう業務を、民間組織に委託します。既存の公共サービスの管理運営を、行政が指定する団体(指定管理者)に委ねたり、公共施設を民間組織に貸与してサービス提供を行います。さらに、民間がインフラの構築などを担い、行政が管理運営を担うケース(民設公営)や、行政と民間組織との契約によって、民間資金の導入や運営ノウハウの活用を図り、効率的なサービス提供を行う手法(PFI)があります。

地域協働・連携型

行政と民間組織が連携し、それぞれに保有する資源やノウハウを活用したサービス提供やインフラ管理を行います。また、民間組織が主体となって行う公共サービスの提供に対して、行政が一定の要件を設定し、活動に資する情報の提供や財政的支援などを行う場合もあります。

民設民営

民間組織が、施設の建設(インフラの構築)・所有・管理運営を行います。行政と民間組織の共同出資による第三セクターが、施設の建設・所有・管理運営を行う方式や、施設・サービスを管理運営する民間組織に対して一定の要件のもとに行政が支援する方式などがあります。

民営化

行政が保有していた施設やサービスなどを民間組織に譲渡し、事業の運営も民間組織に移管します。行政は、譲渡による対価として、金銭や株式により取得しますが、無償とする場合もあります。これまでに提供してきた公共サービスが、法令改正や市民ニーズの変化などによって、行政自ら提供する必要性が薄れている場合や行政が撤退しても市民へのサービス品質が維持される場合に実施されます。

PPP推進の歴史

PPP推進の歴史
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日本における官民連携の歴史は、中曽根内閣時代の「民活」政策にさかのぼるといわれています。この政策は、当時の対外貿易赤字を解消するために内需拡大を促し、同時に行政改革を推進するためにも、民間の活力を活用するというものでした。この「民活」にはじまる日本のPPP推進への歩みを見ていきます。

日本の「民活」は紆余曲折

1985年には当時の国土庁が「首都改造計画」を発表し、とくに東京圏では民間による大型開発が集中することになりました。さらに1986年には「民活法」、1987年には「リゾート法」が制定され、官民連携の仕組みとして第三セクター方式を活用した地方でのリゾート開発が進みました。多くのリゾート施設開発に第三セクターが利用されましたが、責任の所在が明確ではないため不況時には十分に機能せず、2000年代に多くが破綻するという辛酸をなめることになりました。

なお、この時期には、三公社(日本国有鉄道、日本電信電話会社、日本専売公社)の民営化が実現しています。

1999年にはPFI法制定

1999年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が制定されると、以降、数度の改正を経ながら、この法律に基づいて公共施設の整備などが進み、PFIスキームの活用が徐々に定着するようになりました。

小泉内閣の「骨太方針」でPPP推進宣言

2001年6月に小泉内閣が閣議決定した「骨太方針」には、以下のように、公共サービスを民間に開放するという改革策が盛り込まれています。

公共サービスの提供について、市場メカニズムをできるだけ活用していくため、「民間でできることは、できるだけ民間に委ねる」という原則の下に、公共サービスの属性に応じて、民営化、民間委託、PFIの活用、独立行政法人化等の方策の活用に関する検討を進める。

「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日)

日本がPPPを推進する背景

このように日本におけるPPPの推進には、20年以上の歴史がありますが、とくに近年、官民連携の取り組みとしてPPPが注目されるようになったのは、以下のような背景があるためです。

公共施設などの老朽化

公共サービスを適切に維持するためには、老朽化が進む公共施設などの建て替え・改修・修繕や運営に関わるコストの効率化、広域管理、施設の集約化などが求められます。

厳しい財政状況・生産労働人口の減少

国や地方自治体の厳しい財政状況や人口減少による税収減などの現状を踏まえれば、公共サービスの適切な提供を維持するための手段として、民間の資金やノウハウの活用が注目されています。

PPPの代表的な手法「PFI」とは

PFI(Private Finance Initiative)は、PPPの代表的な手法のひとつ。民間の資金とノウハウ(経営手法や技術、アイデアなど)を活用して、公共施設などの設計、建設、整備や維持管理および運営を行う手法です。ここでは、施設事業のケースで紹介します。

PFI事業と従来公共事業との違い

従来型公共事業とPFI事業の違い/「PPP/PFIの概要」内閣府 民間資金等活用事業推進室 
従来型公共事業とPFI事業の違い/「PPP/PFIの概要」内閣府 民間資金等活用事業推進室 

従来の公共事業は、公共施設や公共インフラの整備を進めるにあたって、施設の設計、建設、運営などの手法をあらかじめ国や地方公共団体が決定し、それぞれ個別に民間事業者に発注していました。PFIでは、公共施設などの整備について、どのような設計・建設・運営を行えばもっとも効率的かを民間事業者からの提案を受け、もっとも優れた提案をした民間事業者を選定します。選定された民間事業者は、設計から運営までを行い、自ら資金調達を行います。

PFI事業と第三セクター方式との違い

PFI事業では、公共サービスを提供するための事業を実施するのは、事業提案を行い選定された民間事業者になります。これに対して、第三セクター方式は、国や地方公共団体と民間が出資して新たなに設立する法人が事業を実施します。行政組織と民間事業者が同一法人内で意思決定を行うために、経営責任の範囲が不明確となり、効率的な運営が実現できない可能性もあるようです。

PFIの事業方式と事業類型

PFI事業には、対象となる施設の所有形態によって分類される「事業方式」と、事業の実施主体となる民間事業者がどのように事業収益をあげるのかという観点から分類される3つの「事業類型」があります。

所有形態による分類「事業方式」

対象となる施設の所有形態によって分類されるのが、PFI事業の事業方式です。法令や制度上の制約や事業の特性などから総合的に判断し、決定されます。

BTO(Build Transfer Operate)方式

民間事業者が自ら資金を調達して施設を建設して施設の完成直後に所有権を公共に移転し、その後の維持・管理・運営を同じ民間事業者に委ねます。

BOO(Build Own Operate)方式

民間事業者が施設を建設して維持・管理・運営を行い、契約期間終了後に施設を解体・撤去して事業を終了させます。

BOT(Build Operate Transfer)方式

民間事業者が施設を建設して維持・管理および運営を行い、契約期間の終了後に公共へ施設の所有権を移転するものです。

RO(Rehabilitate Operate)方式

民間事業者が施設を改修した後に、その施設を管理・運営する方式です。施設の所有権は公共のまま移転しないのが一般的です。

収益形態による分類「事業類型」

事業の実施主体となる民間事業者が、どのように事業収益をあげるのかという観点から分類されるのが事業類型です。

サービス購入型

国または地方公共団体が民間事業者に対価(サービス購入費)を支払い、これが事業者の収益となります。

独立採算型

国または地方公共団体からの対価の支払いはなく、公共サービスの提供によって利用者が支払う利用料金収入が事業者の収益となります。

ミックス型

国または地方公共団体などから支払われるサービス購入費と公共サービスの提供によって利用者が支払う利用料金収入の双方が、事業者の収益となります。

今注目されている「コンセッション型」

利用料金の決定などを含めて、民間事業者による自由度の高い事業運営を可能とするために、2011年のPFI法改正によって導入された制度です。利用料金を徴収する公共施設を対象に、施設の所有権を国や地方公共団体などが保有したまま、施設の運営権を民間事業者に委ねます。

民間事業者は自ら利用料金を設定し、その収受を行います。この権利を「コンセッション」といいますが、コンセッションを認めることにより民間事業者が長期にわたって安定した施設運営・維持管理を行うことが可能となり、サービス提供により民間の創意工夫が発揮しやすくなります。

PFI事業で期待される効果

PFI事業で期待される効果
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PFI事業を行うことによって、次のような効果が期待されています。

国民に対して、安くて質の良い公共サービスが提供される

PFI事業では、公共サービスに民間事業者が保有する技術やノウハウを活用することができます。また、事業全体のリスク管理が適切に行われ、施設の設計・建設・維持管理や事業運営に関わるすべて、あるいはその一部を一体的に扱うことによる事業コストの削減が期待できます。

公共サービスの提供における行政の関わり方が改善される

PFI事業では、これまで国や地方公共団体などが行ってきた事業を、民間事業者が担うようになります。このため、公共サービスの提供において官民の役割分担が適切に行われることで、新たな官民のパートナーシップが形成されていくことが期待されます。

民間の事業機会を新たに創り、経済の活性化に貢献する

これまで国や地方公共団体などが行ってきた事業を民間事業者に委ねることによって、民間事業者に新たな事業機会を提供することができます。さらに、PFI事業者が他の収益事業と組み合わせることによっても新たな事業機会を創出可能です。また、PFI事業のための資金調達方法として、プロジェクト・ファイナンスなどの新たな手法が採用されることで金融環境が整備され、新たなファイナンス市場の創成につながることも期待されます。

内閣府調査によるとPFI法に基づく事業数は、2020年3月時点で累計818件。契約金額は約6兆5,539億円にまで伸びてきています。公的負担の抑制につながるPPP/PFIが有効な事業機会は、どの自治体においても存在するはずです。良好な公共サービスの実現に加えて、新たなビジネス機会の創出も期待できるため、国と地方が一体となってPPP/PFIのさらなる推進に取り組むべきでしょう。