マイナンバー制度が目指す国民のメリット、行政のメリットとは?【マイナンバー制度③】
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- writer : GDX TIMES編集部
マイナンバー制度は、電子政府の実現による日本社会のデジタル化の推進を目的とする共通番号制度です。政府はマイナンバー制度やマイナンバーカードの普及によって、どのようなメリットがもたらされると考えているのでしょうか。ここでは、国民のメリットや行政のメリットについて、あらためて確認しておくことにします。
マイナンバー制度の3つの目的
これまで、マイナンバー制度成立の経緯、マイナンバー先進国の事情について紹介してきました。詳しくは、以下の記事をお読みください。
マイナンバー制度①|どこまで知っている? マイナンバー法が成立するまでの紆余曲折
マイナンバー制度②|世界各国のマイナンバー制度の考え方や仕組みを学ぶ
まずは、マイナンバー制度の目的についておさらいしておきましょう。内閣府のホームページでは、制度の目的として以下の3点を挙げています。
公平・公正な社会の実現:給付金などの不正受給の防止
国民の利便性の向上:面倒な行政手続きが簡単に
行政の効率化:手続をムダなく正確に
「マイナンバー制度3つの目的」内閣府
マイナンバー制度が目指しているのは、「便利な暮らし、より良い社会」です。マイナンバー制度の導入によって、必要な添付書類が減るなど、国民の行政手続きが便利になり、行政側の事務処理もスムーズになります。さらに、必要な人に必要な支援を届けることができるようになります。
マイナンバー制度で得られる国民のメリット
さらに、「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて(国・地方デジタル化指針)」では、3つの目的を達成するために、11の個別目標を掲げています。そして、これらの達成に向けた取り組みによって、国民の満足度の継続的な改善が期待されます。まずは、マイナンバーカード制度導入で得られる国民のメリットを整理します。
あらゆる行政手続きがスマートフォンから簡単に (デジタル・ファースト)
オンライン申請受付を徹底し、マイナンバーカードの機能(電子証明書)をスマートフォンに搭載。マイナポータルをはじめとする申請受付システムを整理し、UI・UXを改善することによって、国民は行政窓口が開いている時間帯に限らず、24時間365日、行政手続きを簡単に行うことができるようになります。
行政機関等から同じ情報を聞かれない (ワンスオンリー)
行政機関における情報の取得、保有、やりとりの現況を把握し、継続的な改善を行うことによって行政事務全般における情報の連携を徹底させることで、国民が行う行政手続きにおいて、一度提出した情報(添付書類などを含む)を、2度提出することが不要になります。
あらゆる行政サービスを迅速・確実に受けられる
申請受付から業務システムまでのオンライン化・デジタル化を一貫して徹底することによって、国民は、必要な行政サービスを、迅速かつ確実に受けることができるようになります。
公正な負担と給付実が現された社会の効用を享受できるようになる
預貯金口座へのマイナンバーの付番を円滑に進める仕組みが創設され、マイナポータルをハブとするデジタル・セーフティネットの構築、所得情報と社会保障の連携強化などの施策が徹底されることによって、国民は、公正な負担と給付が実現された満足度の高い社会生活を送ることができるようになります。
個人情報に関するセキュリティが大きく向上する
システムのクラウド化・共同化にあわせて、高度なセキュリティ対策が進められています。また、今後のシステム構築にあたっては、データベースの分散管理とアクセスコントロールを前提とする新たな手法への転換を図られることになります。こうした措置によるセキュリティの向上によって、個人情報の濫用や漏えいによる問題やプライバシーの侵害が発生することがなくなります。
政府のデータ活用促進により魅力あるサービスを享受できる
ベースレジストリをはじめとする公共性のあるデータの生成・管理・保護・公開の円滑化、官民が活用できるデータの種類や更新頻度の増加、質の向上などが進められることで、国民にとって魅力ある新たなサービスが創出されます。国民はこれらのサービスの開発や運営に取り組み、新たな魅力あるサービスを利用できるようになります。
政府の API 活用促進により民間企業の生産性が向上する
APIの共通化などによる利便性の向上、徹底したクラウド化や標準化・共通化によって、民間企業の生産性が向上し、新たな官民の魅力あるサービスの実現などが進み、国民はDXの実現によるさまざまな効用を得ることができるようになります。
マイナンバー制度で得られる行政のメリット
マイナンバー制度の3つの目的を実現するための11の個別目標のうち、行政のメリットにつながる4点について紹介します。
緊急時の行政事務を速やかに処理できる
緊急時などに自治体などが突発的に発生する業務に対応可能な汎用システムとして「(仮称)自治体等共通SaaS基盤」が構築されます。あわせて公金受取口座の登録・利用の仕組みを創設、マイナポータルのUI・UXの抜本的改善などによって、緊急時などに行政が実施する事務処理を速やかに処理できるようになります。
行政の事務が効率化され、正確性やサービスの質も向上する
オンライン申請受付によって窓口業務が減少し、事務処理のオンライン完結により紙への出力や手入力とその確認作業の負担がなくなります。さらに情報連携の徹底によって、行政事務の負担が軽減され、効率化することによって、より質の高い行政サービスの提供が可能になります。
行政が負担するシステムコストを大幅に削減できる
「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)※」の整備、地方公共団体の業務システムの標準化・共通化などを進め、行政が負担するシステム構築にかかるコストを削減します。※政府共通のクラウドサービスの利用環境
安全でユーザーフレンドリーなデジタル行政が実現 する
オンラインによる高度な本人確認・本人認証を可能とするマイナンバーカードの普及促進、利便性の向上、官民における利活用促進などによって、行政は、利用者一人ひとりを確実に確認し、サービスを提供することが可能になります。成りすましをされないという安全性を確保したうえで、一人ひとりにカスタマイズされたユーザーフレンドリーなサービス提供を行うことができるようになります。
「マイナンバーカード」のメリット
マイナンバーカードを取得するおもなメリットは以下の通りですが、その利用範囲はさらに広がっていきます。
個人番号を証明できる
マイナンバー制度が導入され、出産・育児、病気、年金受給、就職、転職、災害など、多くの場面で個人番号の提示を求められることになりました。マイナンバーカードを提示することによって、個人番号を証明することができます。
公的な身分証明書として利用できる
個人番号を提示するだけでは本人確認はできません。マイナンバーカードを提示すれば、一枚で番号の確認と本人確認が可能になるので、運転免許証やパスポートなどを提示する必要もなくなります。金融機関における口座開設、パスポートの新規発行、フィットネスクラブの入会など、さまざまな場面で活用することができます。
行政の各種証明書をコンビニなどで取得できる
住民票や印鑑登録証明書などの公的な証明書を、コンビニエンスストアなどに設置されたキオスク端末を利用して取得することができるようになりました。
各種行政手続きがオンラインで申請できる
マイナポータルにログインすることで、e-Taxなどの電子申請をはじめ各種行政手続きのオンライン申請を利用できます。
付加サービスを搭載した多目的カードとして利用できる
健康保険証や運転免許証としての機能を搭載することが実施・検討されるなど、将来的には図書館カードや社員証、ポイントカードなど、さまざまなカードがマイナンバーカードに一元化され、多目的カードとして利用可能になります。
各種民間のオンライン取引き・口座開設ができる
インターネットにおける不正アクセスなどが問題視されるなか、公的認証サービスの民間への開放が検討されています。インターネットへの安全なアクセス手段として提供されることで、オンラインバンキングをはじめ各種の民間のオンライン取引きに利用できるようになります。
今回は、マイナンバー制度の導入目的、国民や行政にとっての導入メリット、マイナンバーカード取得のメリットについて見てきました。国民にとっても魅力的で利便性の高い制度設計がなされていることがわかります。これらのメリットが国民一人ひとりに浸透することによって、本来の目的である電子政府の実現と日本社会のデジタル化が進むことが期待されます。