デジタル原則|デジタル・規制・行政のデジタル化を一気に加速させる共通のものさし

デジタル原則|デジタル・規制・行政のデジタル化を一気に加速させる共通のものさし

デジタル原則とは、デジタル臨時行政調査会が策定したデジタル社会の実現に向けた5つの原則をいいます。この原則によってなにがどう変わるのでしょうか。今回は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の紹介から、デジタル原則策定の背景、デジタル改革・規制改革・行政改革に通底する5つの原則、デジタル原則への適合性についての点検対象や考え方、デジタル関係の規制や手続きの見直しによる経済効果について紹介します。

デジタル原則を提言する「デジタル社会の実現に向けた重点計画」とは?

デジタル原則を提言する「デジタル社会の実現に向けた重点計画」とは?
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デジタル原則は、2021年12月22日に開催された第二回デジタル臨時行政調査会において提示された、デジタル改革・規制改革・行政改革の共通指針となるデジタル社会に向けた構造改革のための基本原則です。(1)デジタル完結・自動化(2)機動的で柔軟なガバナンス(3)官民連携(4)相互運用性の確保(5)共通基盤の利用という5つの原則をもとに、デジタル、規制、行政の一体的改革を進めることによって、デジタル社会にふさわしい体制への刷新を目指しています。

ここではまず、このデジタル原則を提言する「デジタル社会の形成に関する重点計画・情報システム整備計画・官民データ活用推進基本計画について」 について紹介します。これが2021年12月24日に閣議決定されたことで、2020年12月25日に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」 は廃止されています。

この重点計画は、デジタル庁発足後に初めて策定された重点計画であり、「デジタル社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策に関する基本的な方針」などを定めるものとしています。日本社会が目指すべきデジタル社会のあり方やデジタル社会に向けた構造改革の基本原則を明らかにすることで、「デジタル臨時行政調査会」や「デジタル田園都市国家構想実現会議」などにおける検討や取り組みの道しるべとなるものと位置付けています。

「デジタル原則」策定の背景

「デジタル原則」が策定された背景は、デジタル臨時行政調査会が設置されることとなった背景とも重なるものといえそうです。

日本全体のデジタル化の遅れ

21世紀に入ってからの日本社会のデジタル化の遅れは、官民を通じて深刻な状態にあります。既存の規制が撤廃されることなく行政などの構造が維持されたままでは、経済、社会、産業全体のデジタル化につながることはありません。さまざまな規制や行政のあり方までを含めた本格的な構造改革が行われなければ、デジタル化の恩恵を国民や事業者が享受し、実感することはできないでしょう。

コロナ禍が浮き彫りにした構造的な問題

官民を問わず日本社会全体でのデジタル化の遅れが、コロナ禍によって浮き彫りに。以下のような問題点が露見しました。デジタル化の遅れは医療分野や政府の対応にとどまらず、この国を構成するあらゆる主体(国民、社会、産業、自治体、政府)や分野にまたがる本質的な課題であり、根本的な構造改革が必要です。

自治体と政府の関係の問題

パンデミックの広がりや感染者の行動など、コロナ関連の実態やその影響の広がりについて把握の遅さが、大きな問題になりました。また、多くの行政事務において、バラバラに保有していたデータ連係が困難で、自治体と政府間の連携という課題も見えてきました。

医療・教育などの重要な社会システムの問題

健康・医療システムの緊急時、実態把握のスピード感や病院間や保健所との連携、コロナ関連データの管理体制も十分ではありませんでした。コロナ禍の対策として実施したオンライン診療やオンライン教育でも、その仕組みや体制の脆弱さが明らかになりました。

産業のデジタル化の問題

経済活動がデジタル化するなか、GAFAM※などの巨大IT企業が着実な成長を遂げている一方、日本の産業は大きな後れをとっています。スタートアップによる新陳代謝も進みません。さまざまな規制や書面、目視点検などの慣行が、現場のデジタルかを阻害する要因になっています。

※米国の世界的なIT企業(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の頭文字をとった呼び名

デジタル人材の供給・需要側の関係の問題

デジタル関連の卒業生が少ないといった大学などからの人材供給面の問題に加えて、専門性に沿った給与体系が整備されていないといった需要側である産業界の問題も。将来を担うデジタル人材の教育体制においても課題が山積です。

政府自体の体制・能力の問題

政府のITシステムが十分に機能せず、デジタル人材不足、硬直的な調達制度、EBRMの欠如などの問題に加え、規制面を含めた構造改革を推進すべき司令塔が存在しないという問題点も明らかになりました。

「デジタル改革」「規制改革」「行政改革」に通底する5つの原則とは?

デジタル原則|「デジタル改革」「規制改革」「行政改革」に通底する5つの原則とは?
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デジタル臨時行政調査会において、デジタル改革・規制改革・行政改革に通底すべき、デジタル社会の実現に向けた構造改革のための5つの原則が提示されました。抜粋して紹介します。

デジタル完結・自動化原則

  • 紙や人の介在を見直し、申請・通知・点検などの自動化・機械化など最大限のデジタル化を基本とすること。
  • ルールをデジタルデータ化し、可能なものはアルゴリズム化することにより、機械判読可能な形で提供すること。

アジャイルガバナンス原則(機動的で柔軟なガバナンス)

  • 一律の様式や手法、基準を撤廃して、リアルタイムモニタリングなどの技術活用によるコンプライアンス確保、技術やデジタルリテラシーによる代替えを認めること。
  • AI時代の案件管理手法を見直して、原因究明協力などの制度や自己責任分担についての仕組みを整備すること。

官民連携原則

  • 公共サービスを提供する際には、ベンチャーを含めた民間企業のUI・UXを活用するなど、民間の力を最大化する新たな官民連携を可能とすること。
  • 公共・準公共サービスのデータ基盤の構築にあたっては、APIの公開を基本とすること。

相互運用性確保原則

  • 書式・様式を撤廃してデータモデル化し、システム間のデータ再利用を基本とすること。
  • 国際規格への準拠、国、地方公共団体、準公共間におけるルールの整合性を確保すること。

共通基盤利用原則

  • IDを含むベースレジストリを特定し、その参照・利用を徹底すること。
  • 標準データ様式や調達仕様等は共通モジュールを再利用すること。

「デジタル原則」でどのように点検するのか?

「デジタル原則」でどのように点検するのか?
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構造改革のためのデジタル原則に適合しているかどうかを点検するために、点検対象や考え方について、以下のように示しています。

経済社会活動に関するすべての規律が点検対象

デジタル原則への適合性について、点検対象とすべき規律の範囲は、経済社会活動に関するすべての規律としています。その点検対象は、法律・政令・省令で約1万件、告示で約1万件、通知などで約2万件にのぼり、計4万件以上が対象になります。

デジタル原則を踏まえ制度・規制を見直す考え方

現状では、現場で人の目に頼ることや定期的な点検・確認を求めるなどの規制が数多く存在しています。しかしながら、高精度なセンサーの普及拡大やドローンや空飛ぶクルマなど次世代型のモビリティの登場をはじめ、進化を続けるICT技術を活用することによって、遠隔での監視や点検・確認、オンラインによる非対面の手続きなどを認めるなど、積極的な規制の見直しを進めようとしています。

デジタル原則への適合性の点検対象
デジタル原則への適合性の点検対象/「デジタル時代の構造改革とデジタル原則の方向性について」デジタル庁

常駐規制・専任規制を先行して取り組み

特定の技術や技能を有する人材の常時滞在を義務付ける規制(常駐規制)や、他の事業所などで同様の業務を兼任することを制限する規制(専任規制)が存在しますが、デジタル技術の利活用についてより柔軟に対応することで、有資格者の常駐要件を見直し、遠隔での業務を認めるなどの措置を講じようとしています。

デジタル関係の規制や手続きの見直しによる経済効果は?

デジタル原則|デジタル関係の規制や手続きの見直しによる経済効果は?
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デジタル原則を踏まえた規制や手続きの見直しが、日本経済の成長につながることが期待されます。デジタル化によって期待できる経済効果としては、以下のようなものがあります。

オンライン化等による行政手続コスト効果は1.3兆円

営業の許認可や社会保険、労務管理、補助金などの行政手続きをオンライン化することによって、1.3兆円のコスト削減が見込めると推計されます。

中小企業のAI導入効果は11兆円

中小企業2000社を対象にアンケート調査を行った結果、中小企業におけるAI導入による経済効果は、2025年までに11兆円となると推計しています。

押印廃止による企業のスタートアップを促進

デジタル社会形成関係法律整備法(2021年9月1日施行)のなかで、押印を求めていた各種手続きについて押印を不要とするとともに、書面の交付などを求める手続きについてもデジタル化することを可能とする改正がなされました。これによって電子署名サービスやクラウド型の電子契約サービスなどを利用する企業が増え、2021年度のクラウド型電子契約サービスの市場規模は、2019年度の約3倍となりました。このような環境変化は、多くのスタートアップ企業の誕生を促し、新たな成長産業の創出が期待されます。

官民を通じた日本社会のデジタル化の遅れは、さまざまな規制や手続きを見直し、社会や経済、行政のあり方までを含めた構造改革を本格的に推進することによって取り戻すことができます。あらゆる規制や手続きについて根本から見直し、デジタル原則に適合したものへと変えていくことで、国民一人ひとりが、デジタル化の恩恵を享受し、実感できる社会となっていくことを願わずにはいられません。