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2022年7月20日

【IoT(アイオーティー)】スマートシティ化に不可欠な注目のインターネット技術

IoTは「モノのインターネット」を意味します。モノがインターネットにつながり収集したデータを分析・活用することで新たな価値の創出が可能になります。ここでは、IoTの仕組みや機能、導入のメリットを整理し、IoTの普及に向けた課題、地域課題解決のためのIoTの活用について見ていきます。

「IoT(アイオーティー)」とは

IoTは、Internet of Thingsの略語で、直訳すると「モノのインターネット」になります。現実世界のさまざまなモノが、インターネットにつながることでサーバーやクラウドに接続し、データを蓄積したり交換したりすることを意味します。インターネット空間に蓄積されたデータを、サーバー上で処理し、分析することで、現実世界でより有効に活用できるようになります。IoTによって、現実世界とインターネット空間がつながり、データのやりとりを行いながら、新たな価値の創出につなげていきます。

「スマートシティ」化に欠かせないIoT技術

日本政府は、我が国が目指すべき未来社会の姿として「Society 5.0」を提唱しています。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムによって、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会の実現を目指しています。

この「Society 5.0」を先行的に実現する場として、政府は「スマートシティ」を推進中。都市や地域が抱える課題を解決して新たな価値を創出し続ける「スマートシティ」では、さまざまな先端技術の活用が不可欠となりますが、とりわけ注目されているのがIoTです。IoTによって人とモノがつながり、さまざまな知識や情報が共有されて、今までにない新たな価値を創出することが期待されています。

「Society 5.0」については、以下の記事をお読みください。

Society(ソサエティ)5.0|どんな社会?どう変わる?

IoT技術でモノ同士をインターネットでつなぐ

「モノのインターネット」と訳されるIoTですが、この言葉が使われる以前から、インターネットはコンピュータ同士を接続するために利用されていました。その後、パソコンやサーバーなどのIT関連機器が接続されるようになり、現在では、スマートフォンやタブレット端末も接続されるようになりました。

IoTが普及する前にも、「M2M(Machine to Machine)」というモノ同士を接続する手法があり、センサーネットワークなどで相互に情報をやりとりしていましたが、インターネットには接続されていませんでした。対してIoTでは、モノ自体が通信機能を有しているため、取得したデータをインターネット経由で送受信することができるようになったために、遠隔地から対象物を計測したり制御したりすることも可能になっています。

総務省の「令和元年版 情報通信白書」では、2020年代には約450億台のIoT機器がインターネットに接続されると予測しています。

IoTとIT、ICTとの違い

IT、ICTとの違い
IT、ICTとの違い

ITは、Information Technologyの略語で、「情報技術」と訳され、ソフトウェアやハードウェアなど情報を扱うための技術そのものを「IT(情報技術)」と呼びます。一方ICTは、Information and Communication Technologyの略語で、「情報通信技術」という意味で、ITを活用してヒトやモノ、地域やサービスなどをつなげる技術全般を指します。ICTは、ITを活用したコミュニケーションによって、社会をより豊かにする技術であり、IoTはITによってモノをインターネットにつなげて、より便利な使い方を実現します。

IoTの仕組み

IoTの仕組み
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IoTは、具体的にどのような仕組みで成り立っているのでしょうか。IoTを構成する4つの要素とともに見ていきます。

従来のネットワーク通信と何が違う?

インターネットをはじめとする従来のネットワーク通信では、人が何らかのデバイスに入力し、その動作を指示することによって目的を達成することができました。これに対してIoTは、人が能動的に操作しなくても、モノがセンサー機能を備えることで、モノ自身の位置情報や状態、周囲の環境などの情報を感知し、収集したデータをリアルタイムに送信することが可能になります。

IoTの要素①|デバイス

IoTの主体となるのはモノです。クルマや家電、スマートフォンやタブレットなどあらゆるデバイスが対象となります。

IoTの要素②|センサー

モノ自身や周辺の環境の状態を感知し、データとして取り入れることのできるのがセンサーです。位置情報や形状などを感知するセンサーもあれば、重さや圧力、速度、振動、温度など、さまざまな種類の状態を感知するセンサーもあります。

IoTの要素③|通信ネットワーク

モノや周辺環境の状態をセンサーが感知し、収集した情報を処理するための装置などに送る役割を担うのが、通信ネットワークです。現在、IoTの通信手段として、とくに注目されているのが、5GやLPWAの技術です。

IoTの要素④|情報処理・可視化

センサーが読み取った情報を、現実世界にフィードバックし可視化するために情報処理を行います。この情報処理を高速化し、安全・安心、効率的に行うために大きな役割を担うのがAIです。

IoTの4つの機能と導入のメリット

IoTの4つの機能と導入のメリット
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IoTによって、どのようなことができるようになるのでしょうか。IoTの4つの機能とそれぞれの利用シーンについて見ていきます。

機能①|モノを操作する

遠隔地からインターネットを介して信号を送り、離れたモノを操作することができます。帰宅する前に照明器具を点灯したり、エアコンを起動し室温を調整しておくことができるのも、IoTのこの機能によって実現しています。

機能②|モノの状態を知る

遠隔地にあるモノの状態を、人感センサーや加速度センサー・圧力センサーなどによって、リアルタイムで把握することが可能です。商品の利用頻度や利用時間などのユーザー情報を入手することで、マーケティングリサーチを行うことなくユーザーニーズを把握し、新商品の開発や改善を計画できます。

機能③|モノの動きを知る

センサーなどを活用して、モノの動きを検知することができます。たとえば、電車やバスなどの公共交通機関では、運行状況や混雑情報などをリアルタイムで表示します。また、ペットなどの運動量や食事の量を計測することで、健康状態を把握できるようになります。

機能④|モノ同士で通信する

インターネットを介して、モノとモノが互いに情報をやりとりすることも可能です。たとえば自動運転では、車両に搭載されたカメラやセンサーが周囲の情報を取得し、AIが最適な運転を実行します。同時に信号機や道路に埋め込まれたセンサーから路面の情報や道路の混雑状況を取得するなど、モノ同士の通信によって安全な運行を実現可能です。

IoTの普及・活用を阻んでいる問題点

「Society 5.0」の実現に向けてIoTの活用は不可欠であり、世界的な注目を浴びているという点では間違いありません。しかしながら、現時点では本格的な普及には至っていないというのも事実です。「令和元年通信利用動向調査(企業編)」によると、IoTやAIなどの導入状況は、導入予定も合わせて23.8%。前年と比較した伸び率は微増にとどまっています。

なぜ、IoTの普及が進まないのでしょうか。普及を阻む問題点について見ていきます。

IoT人材が不足している

IoTに精通した人材を確保できなければ、その普及は進みません。IoTを本格的に活用するためには、データの収集や分析から着手することになりますが、これらの業務を管理し、分析結果をもとにIoT活用の方向性を定めることのできる人材の確保に難儀している点は、IoTの普及が進まない要因のひとつです。IoTを適切に扱える人材の育成が急務となっています。

導入コストがかかる

IoT導入のノウハウが自社になければ、外部に委託することになりますが、IoTの開発・導入には多額の費用が発生します。さらに導入後の運営や保守についても外部に委託すれば、運用コストが継続的に発生し続けることになります。これらの費用をどのように捻出するかが、大きな課題となっています。

ネットワーク構築が難しい

IoTを活用するためには、ネットワークシステムの構築が不可欠です。ネットワークシステムの運用に最適なシステムを構築するために、高度な知識と技術力が必要になります。また、運用中に何かトラブルが発生した場合には、復旧のための迅速な対応が求められますが、そのためにはネットワークに接続するすべての機器について熟知していなければなりません。さらに外部からのサーバー攻撃などに耐えきれるようなセキュリティを担保するという高いハードルを乗り越える必要もあります。

導入に対する経営者・現場の理解が必要

IoTを導入すれば、生産や販売の現場はもちろんのこと、設計部門や管理体制など、企業経営にかかわるルール全般が大きく変わることになります。新しいオペレーションによる現場の負担も大きくなり、安定運用までには相応の時間がかかります。経営者も各現場の担当者も、導入の成果ばかりを求めるのではなく、十分な理解と覚悟をもってIoTの導入に臨まなければなりません。

地域課題解決のためのIoT導入は始まっている

ICT・IoTを活用して地域課題を解決する動きは、総務省を中心に進められていて、2019年1月発表の「ICT/IoTによる地域課題の解決に向けた総務省の取組」に、地域IoT実装推進のロードマップがまとめられています。地域IoT実装総合支援について、以下、地方自治体と連携しながら進めている事例を紹介します。

L(Local)アラート

Lアラートとは、地方公共団体などが発出した避難指示や避難勧告などの災害関連情報をはじめとする公共情報を、放送局などの多様なメディアに一斉送信することで、迅速かつ効率的な住民への情報伝達を可能とする共通基盤です。放送局では、これらの情報をL字型画面のテロップとして流したり、データ放送画面で閲覧可能な情報として提供しています。

2018年7月に発生した豪雨関連の情報は、7月4日から9日の発信が15,227件、情報発信を行った団体数は549団体でした。2018年11月末時点では、Lアラートによる情報発信が可能な地方公共団体は1,727団体、その他の団体は118団体、Lアラートを介した情報伝達が可能なメディアを持つ団体は758団体。2019年4月に福岡県が運用を開始したことで全都道府県による利用が実現しています。

Lアラートのさらなる普及・発展のためには、以下の対応が求められています。

  • 災害発生後の被災者支援に関わるお知らせ情報やライフライン情報など発信情報の多様化
  • スマートフォンアプリなどでも利用促進や情報伝達者以外への利用拡大、Lアラート情報の地図化の推進
  • 災害関連情報の正確性・迅速性の向上とLアラートの安定的・持続的な運用基盤の確保

G空間防災システム

G空間防災システムとは、地震、津波などによる広域災害や緊急性を要する大規模市街に対して、G空間情報(地理空間情報)とICTを連携させて構築する先端的な防災システムです。このシステムの活用によって地域連携を図り、地域の災害に対する予測力。予防力・対応力を強化し、被害の縮小と復興・復旧までの経済的・時間的ロスを最小限にすることができます。

リアルタイム津波浸水・被害予測システム

津波発生時に波浪系データなどを利用して、直ちに被害予測を行い、位置や場所に応じて避難情報を迅速に住民に伝達します。

地下街防災システム

都市生活者の85%が時間を過ごす地下街などの屋内空間において、災害の発生場所や人の集積状況などを測位できる間苦境を構築し、位置や場所に応じて的確な災害情報を伝達します。

地域防災システム

土砂崩れや洪水の発生時に、被害状況や予測などの情報を的確に把握し、住民に多層的かつ多様なメディアによって災害情報を伝達します。

IoTの本格的な普及には、まだまだ乗り越えるべき課題が残されているものの、地域課題の解決に向けて、IoTの活用に向けた取り組みは加速しています。モノがインターネットにつながることで、私たちの社会に新たな価値がもたらされることは、じつに歓迎すべきことでしょう。今後ますますIoTの普及拡大への取り組みが世界中で本格化していくなかで、日本社会が目指すべき未来に向かって、IoTをひとつのツールとして取り込みながら、より豊かで持続可能な社会が到来することを願っています。

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