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2023年5月16日

「デジタル化」と「オンライン化」を区別することで見えるもの

DXという言葉が一般に使われ始め、「デジタル化」、「オンライン化」という言葉も毎日のように目にします。しかし、これらの言葉はときおり混同され、明確に使い分けがされていないことも多いように感じます。今回はデジタル化とオンライン化の違いをスタート地点に、DXの進め方のヒントを探ってみたいと思います。

「デジタル化」と「オンライン化」の違い

デジタル化とオンライン化の定義というと、細かいところでは諸説あるのが現状ではありますが、単語の通りに受け取ると、おおむね次のような表現で区別できると思います。

  デジタル化  アナログ形式の情報やデータをデジタル形式に変換すること
  オンライン化 情報やサービスをインターネット上で利用できるようにすること

デジタル化は「モノの形を変えること」、オンライン化は「ヒトの行動の場を変えること」と言い換えても良いかもしれません。
デジタル化の目的がオンライン化であり、オンライン化の前提がデジタル化である、というような場合などに、しばしば両者の境界があいまいになりがちですが、本来的にはそれぞれに異なる取り組みです。

住民のメリットから見る「デジタル化」と「オンライン化」の区別

デジタル化とオンライン化は異なる取り組みであり、メリットも異なります。それぞれにメリットは様々なものがありますが、主なメリットとしては以下が挙げられます。

  デジタル化  コンピュータで扱えるようになる       
  オンライン化 場所や時間を合わせなくてもやり取りができるようになる

デジタル化のメリットはオンラインでやり取りできるようになることの手前に、コンピュータで扱えるようになるという大きなメリットがあり、必ずしもオンライン化とセットにはなりません。

一方のオンライン化も、「同じ場所にいなくてもコミュニケーションが取れる」点がとりわけ大きなメリットであり、やり取りする情報が電子データである必要はありません。

手続きを例に見てみましょう。紙の様式に手書きで記入して提出する方式の手続きから、Excelファイルの様式に入力・印刷して提出する方式に変更することを考えます。これは手続きのデジタル化にあたります。様式がデジタルファイルになることで、利用者は面倒な手書き作業から解放されますし、書き終えた用紙に子どもがジュースをこぼして台無しになることもありません。また、翻訳ソフト、音声ソフトや読み上げソフトなどを利用できるようになるため、様々な条件の方が幅広いサポートを得られるようになるメリットもあります。このように、様式をExcelファイルに置き換えるデジタル化だけでも色々なメリットがあり、必ずオンライン化がセットでなければ意味がないということはありません。

オンライン化も同じように手続きを例に考えてみます。オンライン会議システムなどで、住民の自宅と、役所(役場)の窓口を繋いで会話ができるようにすれば、住民は場所を選ばずに手続きを行うことができるようになります。この際、窓口の職員が聞き取りを行いながら紙の様式に必要事項を手書きで記入する方式であっても、住民にとっては場所を移動せずに手続きできるという点でオンライン化のメリットを得ることができ、必ずデジタル化が前提になるということはありません。

「デジタル化」と「オンライン化」を区別することで見えるもの

ここまでデジタル化とオンライン化の違いについて見てきました。両者を区別して考えると、区別せずに考えた場合に比べて目標を分割して小刻みに設定しやすくなります。

再び手続きを例に考えてみましょう。デジタル化とオンライン化とを区別せず、ただ「電子申請」のサービスをスタートすべく検討を開始します。すると現場の業務フローの変更、セキュリティの検討、システム開発やネットワークに関する担当部署やベンダー企業などとの調整などなど、様々な課題が見えてきます。「電子申請」を一つの塊として捉えてしまうと、これらの課題をすべて片づけるまで先に進めません。

しかし手続きのデジタル化とオンライン化を分けて考えると、オンライン化の方に難題が集中しているケースがほとんどです。であれば難題が少ないデジタル化の方で得られるメリットに焦点を合わせて小出しに成果をあげていくことで、オンライン化の難題の検討を進めている間にも、住民サービスの向上を止めずに取り組みを進めていくことができるようになります。

オンライン化=インターネットとは限らない

前半ではオンライン化を「情報やサービスをインターネット上で利用できるようにすること」と定義しました。しかし正確にはオンライン化=インターネットとは限りません。LG-WANのような、範囲の限られたネットワーク上で情報・データをやり取りできるようにすることも立派な「オンライン化」です。

LG-WANのような内部ネットワークは、住民がアクセスできない環境であるため、住民が直接触れるサービスのオンライン化には向きませんが、庁内や自治体間でやりとりする情報・データであれば、内部ネットワーク上でのオンライン化で充分であり、インターネット上でのオンライン化とはクリアすべき課題が異なります。場合によって課題の難易度にも違いが出るので、オンライン化を進める切り口になるかもしれません。

今回はデジタル化とオンライン化の違いを考えるところから、難しい取り組みを分割して少しずつ進めていく方法を見てきました。切り分けたデジタル化とオンライン化は、その中をさらに切り分けて考えることができます。オンライン化のインターネットと内部ネットワークの切り分けはその一例です。もし課題が複雑に思われるときは、このような切り口で整理してみてはいかがでしょうか。

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