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【レポート】SEMIC Conference 2023
- category : AUKOE の コエ GDX レポート #AI #情報構造設計
- writer : 安井秀行(アスコエパートナーズ)
先日、欧州で開催されたSEMICコンファレンスに参加してまいりました。今回は「Interoperable in the Age of AI :AI時代のインターオペラビリティ」という興味深いテーマでの実施でしたので、その概要と共に、感じたことを報告します。
本コンファレンスは、スペインの首都マドリッドで、10月18日、19日に開催されました。参加者は300名程度と、非常に多く、欧州内での注目度の高さを実感しました。
このSEMICでは、データの相互運用性、すなわち「(データ)インターオペラビリティ」の重要性を大変強調しており、その中でも特に近年の技術進化を象徴する「生成AI」の役割と方向性が中心テーマとなっていました。
話題として挙がった「ChatGPT」などの生成AIにおいて、データはまさに一番の源泉とも言える要素です。
ChatGPTは、Large Language Models(LLM)として知られる機械学習の自然言語処理モデルの一クラスを拡張したものです。LLMは膨大な量のテキストデータを処理し、そのテキスト内の単語間の関係を推測します。そこで、LLMにおいて文書データの取り扱いはカギとなります。このLLMを構築する過程でも、総合的なインターオペラビリティの確保、つまりデータのやり取りのスムーズさが非常に重要であると、SEMICコンファレンスで何度も参加者から指摘がありました。
さらに、EU各国AI担当トップの方々からも、興味深いお話を伺うことができました。
特に印象的だったのは、エストニアの元GCIOであるSiim Sikkut氏から共有のあった、AIの時代になぜヨーロッパが以前よりも相互運用性を必要としているのか、そしてなぜ相互運用性やセマンティック関連の取り組みが、AIの時代にとってこれまで以上に重要であるのか、という実践的な視点での取り組みです。エストニアは公共部門でのAIの早期導入国で、相互運用性の先駆者でもあり、これにより何がうまくいき、政府(およびヨーロッパ)でのAIの潜在能力を最大限に引き出せるか、その方法についてのお話がありました。特に「AIがインターオペラビリティの加速化を促進する」という考え方のもと、AIを活用してインターオペラビリティを更に高める取り組み(Gen IOP)、例えば文章の内容が適切かをチェックするテキストツールキット(Texta Toolkit)を活用して、適切な文章データを生成する取り組みなどが紹介されました。
このような議論を通じて、インターオペラビリティとAIは、互いに深く関連しており、どちらも欠かすことのできないものとなっていることを私自身実感しました。
特に、欧州においては、これからのAIを活用したサービス展開において、インターオペラビリティの向上が鍵となるという共通認識が形成されていることも確認できたと感じています。
まとめとして、今回のSEMICコンファレンスは、AIとインターオペラビリティという二つの大きなテーマを中心に、その未来に向けたビジョンや取り組みが共有される非常に価値ある場となりました。
日本においても、生成AIと、インターオペラビリティの議論は盛んにおこなわれていますが、それらは別々に行われ、両者を結びつける議論は、まだ行われていないようです。こうした視点にも、日本のDXを推進するヒントがあるのではと感じた次第です。
この記事を書いたのは:安井秀行(アスコエパートナーズ)
株式会社アスコエパートナーズ 代表取締役社長 NPO団体 アスコエ代表 一般社団法人ユニバーサルメニュー普及協会 理事 慶応義塾大学 政策・メディア研究科 非常勤講師 内閣官房「新戦略推進専門調査会 デジタル・ガバメント分科会」委員 内閣官房「地方官民データ活用推進計画に関する委員会」委員 マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパン、株式会社DBMG取締役を経て、現職。企業だけでなく、行政等公的機関も含めたウェブ、マーケティング戦略関連の幅広いコンサルティングを行っている。