【GビズID】1つのIDで複数の行政サービスにアクセスできる認証システム
- category : GDX ナレッジ #データ社会 #デジタルガバメント
- writer : GDX TIMES編集部
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「GビズID」は、法人および個人事業主が、複数の行政サービスを1つのIDで利用可能な認証サービスです。今回は、この「GビズID」で利用可能な行政サービス、「ワンストップ・ワンスオンリー」や「法人デジタルプラットフォーム」構想の実現に寄与する「GビズID」が担う役割について解説します。
GビズIDとは
GビズIDは、法人および個人事業主が行政サービスを利用する際に、電子申請を行うための共通認証基盤(システム)です。これまで、事業者が行政サービスを利用するときには、行政手続きごとにID/パスワードを登録する必要があり、その発行手続きや管理面の煩雑さが大きな負担となっていました。
GビズIDを取得すれば、ひとつのアカウントで、複数の行政サービスを利用することができるようになります。また、企業が電子申請を行う場合には、その確認手段として電子証明書の取得(有料)が必要でしたが、GビズIDを取得(無料)していれば、電子申請書の添付は不要となり、IDとパスワードによる認証が可能になりました。取得したアカウントには、有効期限や年度更新の必要もありません(令和3年8月現在)。
GビズIDで手続きできる行政サービス
現在は、デジタル庁所管の補助金申請システム「JGrants」や経済産業省の「保安ネット」、農林水産省の共通申請サービスなどの電子申請に、GビズIDの利用が可能になっています。さらに2020年4月からは、厚生労働省の社会保険関係の一部手続きでもGビズID対応がスタートしました。
2020年8月には、地方公共団体などが運用する行政手続システムにおいても、GビズIDを活用できるように、規定の整備が行われました。今後は、他の府省や地方公共団体における電子申請にも、GビズID認証が拡大される予定です。GビズIDが利用可能な行政サービスは、以下のサイトで確認できます。
GビズIDで利用できる行政サービス一覧(gBizIDサイト)
GビズIDで「ワンストップ・ワンスオンリー」の実現へ
2018年に策定された「デジタル・ガバメント実行計画」のなかで政府は、官民を通じたデータの連携、サービスの融合を実現し、世界に先駆けた日本型デジタル・ガバメントの実現を目指すことを宣言しています。これを受けて、行政サービスのデジタル化への取り組みが加速することになりました。
行政サービス改革推進の柱として、政府は以下の3点を挙げています。
- 行政サービスの100%デジタル化
- 行政保有データの100%オープン化
- デジタル改革の基盤整備
GビズIDの認証サービスは、この3本柱のうち、とくに「行政サービスの100%デジタル化」を推し進めるための基盤となるものです。GビズIDの取得によって、事業者は複数の行政サービスを利用することができるようになり、一度提出したデータの再提出は不要になります。この「ワンストップ・ワンスオンリー」の実現によって、行政サービスの利便性が向上するばかりではなく、手続きの簡素化による行政・事業者双方の業務負担の軽減にもつながります。
「法人デジタルプラットフォーム」構想のファーストステップを担うGビズID
経済産業省は、法人向けの行政手続きにおいて、認証やデータ連携、データのオープン化などに必要な機能を標準化する「法人デジタルプラットフォーム構想」を進めています。このプラットフォームの運用においても、GビズIDによる認証機能は重要な役割を担っています。
法人デジタルプラットフォームは情報の「質」と「連携」がカギ
経済産業省による「法人デジタルプラットフォーム構想と政府全体の活用に向けて」によると、「法人デジタルプラットフォーム」の構築には、「手続効率化・利便性向上」を図る3つの柱に加え、「行政サービスの変革」や「官民データの共有による取引コストの解消」が必要になるとしています。
手続効率化・利便性向上
- ワンストップ・ワンスオンリー|事業者も便利に、行政の業務も効率化
- 情報発信のアプリ化|支援策について簡易にわかりやすく発信
- デジタルマーケティング|必要な支援をプッシュ型で提供
行政サービスの変革
- EBPM/データに基づく政策立案|支援実績や財務情報をかけあわせ、補助金や支援策を設計
- 申請レス・審査レス行政|履歴データ等を活用した審査レス行政への転換
官民データの共有による取引コストの解消
- 民間企業がコストをかけず素早く、適切な取引相手を探し出せる|信用情報の不足による取引コストの解消
- 行政はデータの収集・提供と市場の監視機能に特化|行政サービスの担い手は民間に
つまり、「ワンストップ・ワンスオンリー」を実現するためには、GビズIDによる認証基盤だけではなく、行政側に情報を蓄積して随時更新を行いながら、各府省間や民間との連携を支える仕組みが不可欠ということです。加えて、法人ベース・レジストリ(事業者基本データベース)の整備も必要になるとしています。
法人デジタルプラットフォーム・エコシステムを拡大中
経済産業省では、法人向けの行政手続きのデジタル化を進め、利用者である事業者の利便性を改善するために、認証やデータ連携、データのオープン化などの機能を担う個々のシステムを開発・運用しながら、これらの機能を連携させたエコシステムとして拡大・発展させようとしています。
行政サービス|JGrants(Jグランツ)
JGrants(Jグランツ)は、2020年1月から運用を開始した補助金のオンライン申請プラットフォームです。公募段階から公布、事業報告までのプロセス全体の手続きがデジタル化され、複数の補助金をワンストップで選択できます。今後は、現行システムの課題を踏まえながら、サービス改善を進め、申請可能な補助金を増やしていくことが期待されます。
データ連携|Gビズコネクト
添付書類の撤廃やワンスオンリーを実現し、行政手続きを簡素化するための基盤となるプラットフォームです。APIの活用によって各省庁や地方自治体、民間企業がそれぞれ保有するデータを相互に利用可能な仕組みを構築し、官民データのシームレスな連携を可能にします。経済産業省内のシステム間において実証的な連携を開始し、他の省庁や民間との連携でも活用できる環境へと拡張していきます。
オープンデータ|Gビズインフォ
各省庁の行政手続きで得られた法人データを、法人番号に紐づけて管理し、オープンデータとして提供しています。今後は、各省庁が保有する法人情報の網羅性を高めていくとともに、ニーズの高い情報の拡充を進めていきます。
法人向けの行政サービスの認証基盤となる「GビズID」の運用をファーストステップとして、政府はデータ連携、データのオープン化などの機能を担う個々のシステムを開発・運用しながら、これらの機能を連携させたエコシステムとして拡大・発展させようとしています。この構想はまだまだ発展途上ですが、さらに多くの機能を連携させながら「法人デジタルプラットフォーム」として進化していくことに期待したいと思います。