• HOME
  • GDX ナレッジ
  • 【デジタル・ガバメント】日本の「IT化戦略」の課題を解決する「デジタル・ガバメント実行計画」とは?
2021年8月4日

【デジタル・ガバメント】日本の「IT化戦略」の課題を解決する「デジタル・ガバメント実行計画」とは?

デジタル・ガバメントとは、デジタル技術の徹底活用と官民協働を軸として、国と地方、官民の枠を超えて行政サービスを見直し、行政のあり方を変革していくこと。この記事では、注目されるデジタル・ガバメントに向けた動きを理解するために、実行計画策定までの歩みや具体的な取り組みなどについて解説します。

デジタル・ガバメントとは

日本はいま、少子高齢化の進行、それに伴う生産年齢人口の減少、さらには大都市圏への人口集中など、多くの社会課題を抱えています。「デジタル・ガバメント」とは、このような社会課題を解決し、経済成長を実現するために、デジタル技術の徹底活用を前提に、行政サービスを見直して行政のあり方そのものを変革していくことをさします。

ただし「デジタル・ガバメント」の実現は、たんに情報システムを整備し、手続きをオンライン化することだけを意味するものではありません。行政の縦割りや国と地方、官民の垣根を越えた行政サービス改革を実行して、内閣府が提唱する未来社会「Society(ソサエティ) 5.0」の時代にふさわしい、年齢・性別・地域・言語といったさまざまな違いを乗り越えた、住民一人ひとりに寄り添った行政サービスの実現を目指しています。

デジタル・ガバメントとは
Designed by Freepik

日本はいま、少子高齢化の進行、それに伴う生産年齢人口の減少、さらには大都市圏への人口集中など、多くの社会課題を抱えています。「デジタル・ガバメント」とは、このような社会課題を解決し、経済成長を実現するために、デジタル技術の徹底活用を前提に、行政サービスを見直して行政のあり方そのものを変革していくことをさします。

ただし「デジタル・ガバメント」の実現は、たんに情報システムを整備し、手続きをオンライン化することだけを意味するものではありません。

行政の縦割りや国と地方、官民の垣根を越えた行政サービス改革を実行して、内閣府が提唱する未来社会「Society(ソサエティ) 5.0」の時代にふさわしい、年齢・性別・地域・言語といったさまざまな違いを乗り越えた、住民一人ひとりに寄り添った行政サービスの実現を目指しています。

「デジタル・ガバメント実行計画」策定までの歴史

「デジタル・ガバメント実行計画」策定までの歴史
Designed by Freepik

日本における「デジタル・ガバメント」の実現に向けた動きを理解するために、「デジタル・ガバメント実行計画」策定までの歩みを振り返ってみることにします。

日本のIT化は2001年「e-Japan戦略」からスタート

「デジタル・ガバメント」という言葉は、2017年に策定された「デジタル・ガバメント推進方針」や、この方針を実行・推進するために2018年に策定された「デジタル・ガバメント実行計画」を契機に広まっていきました。

2001年に施行された「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(通称:IT基本法)以降、「デジタル・ガバメント実行計画」が策定されるまでには、以下のような段階を経ています。政府や各省庁から発信される情報には、これらの法律名や策定名が用いられることがあるため、ここにそれぞれの概要を紹介しておきます。

2001年|「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(通称:IT基本法)」施行

日本初のIT戦略「e-Japan戦略」を推進するための基本方針を定め、すべての国民がICTの成果を享受できる高度ネットワーク社会の実現のために「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの整備」「行政の情報化の推進」などを掲げた。

これまでの経緯とIT基本法の概要|令和2年10月15日

2014年|「サイバーセキュリティ基本法」施行

サイバーセキュリティに関する施策を推進するために、その基本理念、国および地方公共団体などの責務やサイバーセキュリティ戦略などの基本事項を規定したもの。

2015年|個人情報保護法改正

個人情報の定義を明確化することにより、個人情報として取り扱うべき範囲の曖昧さ(グレーゾーン)を解消。誰の情報かわからないように加工された「匿名加工情報」について、企業の自由な利活用を認めた。

個人情報保護法の改正概要|平成27年11月

2016年|官民データ活用推進基本法成立

官民データ(国・地方公共団体・独立行政法人などの公的機関や民間事業者が保有し管理しているデータ)を適正かつ効率的に活用するための基本理念、国や地方公共団体、事業者の責務、データ活用推進基本計画、基本的施策などを定めた。

官民データ活用推進基本法について|平成29年3月

2017年|「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(通称:官民データ計画)」策定

官民データ活用推進基本法に基づき、官民データ利活用の推進に関する施策や政府のデジタル政策を取りまとめたもの。

市町村官民データ活用推進計画策定の手引 (案)|平成29年

「電子政府」「電子自治体」に投資効果の壁

前述のとおり、2001年の「e-Japan」戦略の策定以来、日本政府や地方自治体では、おもに以下の3点に取り組み、行政サービスのデジタル化による合理化・効率化や、利用者の利便性向上などに努めてきました。

  • インターネットなどを活用した行政情報の提供
  • 国民や住民、企業と、国・自治体との間の手続きの電子化
  • ワンストップサービスの実現

これらの取り組みは「電子政府」「電子自治体」とも呼ばれ、一定の成果をあげてきましたが、国と地方公共団体の連携や官民協働、社会変化のスピードへの対応などの点で、多くの課題も残しています。

社会の急速な変化に対応して、「電子行政」「電子自治体」への投資対効果を高めるためには、行政サービスの提供側が一方的にその仕様を決めるのではなく、そのユーザーである市民の要望を十分に把握し、市民ニーズを起点としたサービスへと作り替えていく必要があります。このように「利用者価値の最大化」という観点から行政サービスを再設計することを基軸として策定されたのが、「デジタル・ガバメント推進方針」です。

2017年|「デジタル・ガバメント推進方針」策定

2017年に策定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(通称:官民データ計画)」は、「官民データ活用推進基本法」に基づき、官民データの利活用推進に関する施策や政府のデジタル政策を取りまとめたものです。この計画の重点分野の一つが「デジタル・ガバメント」の実現であり、そのための道筋を示したのが「デジタル・ガバメント推進方針」です。

利用者視点に立った行政サービスを実現し、その価値を最大化させるためには、行政機関の縦割りや、国と地方、官と民という枠を越えた行政サービス改革が求められます。そのために官民協働を軸として、さまざまな関係者との共創によって行政サービスを再設計するための取り組み方が、推進方針として示されています。

「デジタル・ガバメント実行計画」の具体的な取り組み

「デジタル・ガバメント実行計画」の具体的な取り組み
Designed by Freepik

「官民データ活用推進基本法」や「デジタル・ガバメント推進方針」で示された方向性を具体化して実行する計画として2018年に策定されたのが、「デジタル・ガバメント実行計画です。そのコンセプトは、「電子政府」から「デジタル・ガバメント」へ。政府・地方・民間すべてを通じたデータの連携、サービスの融合を実現し、世界に先駆けた、日本型の「デジタル・ガバメント」の実現を目指すことを宣言しています。

横断的施策による「行政サービス改革」の推進

「行政サービス改革」推進の柱として、以下の3つを掲げています。

行政サービスの100%デジタル化

行政のあらゆるサービスをデジタルで完結させるために、以下を基本3原則として、利用者中心の行政サービス改革を実現します。

デジタルファースト

各種手続きのオンライン原則を徹底し、個々の手続きやサービスを一貫してデジタルで完結させること

ワンスオンリー

マイナンバー制度などの活用によって、行政などが保有している情報や添付書類などの提出を不要とすること

コネクテッド・ワンストップ

民間サービスとの連携を含め、複数の手続きやサービスをワンストップで実現すること

行政保有データの100%オープン化

オープンデータを前提とした業務・システムの設計・運用を推進し、行政が保有するデータの原則オープン化を徹底。そのうえで、データを活用したイノベーションや新たなビジネスモデルの創出を後押しするために、民間事業者などとの直接対話を通じて民間ニーズを把握し、ニーズに即したオープンデータの推進に取り組みます。

デジタル改革の基盤整備

日付や住所などのコアとなる行政データ形式について、データ連携のための標準を策定。施設・設備・調達などの社会基盤となる領域についての語彙・コードなどの体系を、行政データ標準リスト(仮称)として整理します。さらに複数の手続きを一つのIDで申請できる認証システムの整備などを通じて、データが官民で有効活用される基盤を構築します。

各府省計画の策定と個別分野のサービス改革

各府省や各分野サービスとしては、おもに以下の2つへ取り組みます。

各府省中長期計画の策定

先述した横断的施策による「行政サービス改革」を推進するために、各府省のITガバナンス強化を図り、各府省におけるデジタル改革の中長期計画を策定します。

個別分野におけるサービス改革

行政手続きのオンライン化の実施状況を把握するために行った棚卸調査の結果を踏まえて、たとえば、金融機関と行政機関の情報連携(預貯金などの照会)ほか、先行的にサービス改革を実施すべき分野を定めて推進しています。

「すぐ使えて」「簡単」「便利」なサービスを目指すためのサービス設計12箇条

「すぐ使えて」「簡単」「便利」なサービスを目指すためのサービス設計12箇条
Designed by Freepik

先述のとおり、行政サービスを利用者視点でデザインできるかどうかは、たんなる行政手続きのデジタル化で終わってしまうか、住民一人ひとりに寄り添った行政サービスを提供して新たなイノベーションを創発できるかが岐路となります。

政府の意気込みが感じられる「サービス設計12箇条」

「デジタル・ガバメント実行計画」には、利用者視点のサービスを設計するうえでのノウハウが「サービス設計12箇条」としてわかりやすくまとめられています。この12箇条には、日本政府が目指す「デジタル・ガバメント」実現への想いが込められていて、その意気込みが感じられます。その内容を紹介します。

利用者のニーズから出発する

12箇条の最初に、行政サービスの提供者の視点ではなく、利用者の視点に立って何が必要なのかを考えるべきだと示しています。さまざまな利用者像が想定される場合には、それぞれの立場から検討することが大切で、サービス提供側の職員も利用者の一人として考えるべきだとしています。また、ニーズを把握するだけではなく、分析を加えることによって利用者が抱える課題を浮き彫りにすることが、サービスの向上につながるといっています。

事実を詳細に把握する

思い込みや仮説をもとにサービスを設計するのではなく、現場で何が起きているのか、事実に基づく十分な分析を行いその実態を把握し、課題を可視化し因果関係の整理を行ったうえで、サービスの検討に反映すべきとしています。また、データに基づく定量的な分析の重要性にも触れています。

エンドツーエンドで考える

利用者ニーズの分析にあたって、個々のサービスや手続きだけを切り取って検討するのではなく、サービスを受ける必要が生じたときから、サービス提供が完了する時点まで、エンドツーエンドで考えることが大切だとしています。他の行政機関や民間企業が担うサービスの利用までも含めた、利用者の行動全体を一連の流れとして考えようと呼びかけています。

すべての関係者に気を配る

サービスの利用者だけではなく、すべての関係者にどのような影響が及ぶのかを分析して「Win-Win」のしくみを構築します。たとえデジタル機器が使えない人でも変わらない便益が得られるように、デジタル技術を活用すべきだとしています。

サービスはシンプルにする

初めて利用する人やデジタル技術に詳しくない人でも自力でサービスを利用して完結できるように、シンプルな設計の大切さを説いています。また、行政側から提供する情報や利用者に提出や入力を求める情報は、必要なものだけに限定すべきとしています。

デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める

IoTやAIなどの新技術の導入について積極的に検討し、既存業務の見直しによるデジタルへの移行によってサービスの改善を図るべきとしています。また、情報セキュリティ対策やプライバシーの確保など、安全・安心なシステム構築に取り組み、提供サービスの価値を高めていきます。

使用者の日常体験に溶け込む

利用者が日常的に多くの接点を持つ民間のサービスやプラットフォームとともに行政サービスが提供されるような設計を心掛けます。サービス利用の費用を低減し、より多くの場面での新たなサービス提供を目指します。

自分で作りすぎない

サービスのすべてを一からつくりこむのではなく、既存の情報システムの再利用や過去に得たノウハウの活用、クラウドサービスなどの民間サービスの利用を検討すべきとしています。また、行政自らがつくるべきサービスかを事前に検討すること、API 連携などによって共有できるものとするよう心掛けることにも触れています。

オープンにサービスを作る

サービスの質を向上させるために、新たなサービスの設計時には、利用者や関係者を検討に巻き込み、意見を取り入れるべきだとしています。その後の検討の経緯や決定理由、サービス開始後の提供状況などについても、可能な限り公開します。

何度も繰り返す

試行的にサービスを提供しながら、利用者や関係者からの意見を踏まえたサービスの見直しを行います。確認と改善のプロセスを繰り返しながら品質を向上させようということです。サービス開始後も、継続的に利用者や関係者からの意見聴取を行い、つねに改善を図っていきます。

一遍にやらず、一貫してやる

プロジェクトが困難であればあるほど、すべてを一度に実施しようとは考えないこと。まずビジョンを明確にし、優先順位や実現可能性を考慮して段階的に実施することの大切さを説いています。成功や失敗、それによる軌道修正を積み重ねながらも、終始、一貫性を持って取り組むことが重要だとしています。

情報システムではなくサービスを作る

提供するサービスによって利用者が享受することができる便益を第一に考えます。すべてを情報システムで実現するのではなく、必要に応じて人の手を介したサービスも組み合わせながら、最良のサービスを実現しようということです。

デジタル・ガバメントを推進するうえで大切なことは、国と地方自治体、官と民、都市と地域など、さまざまな関係者が声をあげ、知恵を寄せ合い協働することではないかと考えます。それぞれの緊密な連携を阻む要因を一つひとつ取り除きながら、目指すべき未来社会の実現のためのプラットフォームを構築することが期待されます。

関連記事
Top