発表!「パブリック・エクスペリエンス・アワード2022」~受賞自治体インタビュー
- category : GDX レポート #情報構造設計
- writer : GDX TIMES編集部
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株式会社アスコエパートナーズでは、毎年、全国の自治体サイトから、住民や地域に密着した姿勢をもってエクスペリエンス設計を推進している自治体を表彰する「パブリック・エクスペリエンス・アワードを実施しています。自治体DXの必要性が叫ばれる中、2022年度も住民・利用者視点で自治体サイトをさまざまな観点からチェックし、受賞自治体を決定いたしました。
【表彰の目的】素晴らしいサービスの共有ときっかけづくり
自治体が住民や地域に密着した姿勢をもってエクスペリエンス設計を推進している活動を広く共有することによって、新しい公共のあり方を共に創っていく。こうした想いやビジョンを、国や自治体、そして民間企業や利用者の方々と共有し、新しい「パブリック・エクスペリエンス」を創っていく機運やそのきっかけづくりとなることを目的としています。
【選出の基準】今年度から手続きDX推進と子育て支援も追加に!
毎日 100 以上の自治体ウェブサイトをチェックするリサーチャー が、東京 23 区と全国の市の計815自治体のサイトを対象に、下記の基準で評価しました。
(1)利用者として情報を得ようとウェブサイトを見た際に、好感を覚えるか
(2)行政サービス情報が、説明項目ごとに整理され、理解しやすく書かれているか
(3)構造的合理性の観点による、ユーザビリティ(使いやすさ)とファインダビリティ(見つけやすさ)
さらに、コロナ対応をきっかけにDXの必要性・重要性が高まってきたことを背景に、今年度より下記基準を追加しました。
(4)住民が行う手続きに関するDX推進が分かりやすく情報発信されているか
また、2022.10月に政府の総合経済対策の1つとして、すべての妊婦や子育て家庭に寄り添う「伴走型相談支援」が始まったこともあり、アスコエの運営する『子育てタウン』を導入する自治体を対象に、下記基準で新たに賞を設けることとしました。
(5)標準的な行政サービスに加え、金銭的支援の充実、保育支援、就職支援、家族の子育て支援等、子育てしやすくする工夫された行政サービスが提供されているか
それでは今年度の受賞自治体受賞インタビューと共にご紹介します。
👑行政手続DX推進賞
DXへの積極的な取り組みがウェブサイト上で住民に対して情報発信されており、内容が伝わりやすいかを評価しました。手続のオンライン化に加え、住民が使いたいときに簡単にサービスへ辿り着くための導線設計や、気軽に使ってみたいと思えるような、使い勝手も重要です。
【受賞自治体】 ●神奈川県横浜市 ●愛知県一宮市 ●広島県東広島市
◇神奈川県横浜市
【受賞の理由】
「横浜DX戦略」について、TOPページやYouTubeなどで積極的に発信されています。市民意見募集(パブリックコメント)を実施したうえで策定された「横浜DX戦略」を広く、市民の方へお伝えできるよう工夫されています。また、既に実施されている取り組みではマイナンバーカードの読み取り・クレジットカード決済などもスマートフォンで完結する申請システムや、一時保育の予約システムなど、複数のオンライン申請システムがあり、DXに積極的に取り組まれている点を評価しました。
横浜市デジタル統括本部企画調整課
担当係長・玉 曜一さん&磯田 絵理香さん
【受賞コメント】
Q:選出の理由に関して、受賞の感想をお聞かせください。
令和4年9月に策定した「横浜DX戦略」は、多くの皆様と議論を重ね、現場の課題を把握しながら、デジタルの恩恵を限られた人や地域だけでなく、すべての市民、地域に行きわたらせ、実感あるものとしていくことを大切に、まとめたものです。特に、行政手続のオンライン化については、市民の皆様が利便性を実感できるよう、利用件数の多い手続から優先的に取り組み、スマートフォンに対応した環境づくりに力を入れてきたところであり、今回、このような評価をいただき、受賞できたことを大変嬉しく思っております。
Q:一番のこだわりポイントは?
本市は人口376万人の日本最大の基礎自治体です。デジタル化を望む市民や事業者が多くいらっしゃる一方、デジタルが得意でない方やそのような環境にない方など、様々な方がいらっしゃいます。そうした方々にも寄り添えるよう、人や地域を中心に置き、デジタル技術を実装することが大変重要だと考えており、「横浜DX戦略」でも、その思いを「デジタル×デザイン」という言葉で表現しました。実際、令和5年4月に本格導入する消防団活動支援アプリでは、利用者の声を大切に現場での実証を重ねながら開発を進めました。今後も市民の皆様にとって本当に使いやすいデジタル化となるよう、利用者の目線・ニーズを大切に進めていきたいと考えています。
Q:今後の展開予定は?
「横浜DX戦略」も2年目に入り、目標の着実な達成に加え、生みだした成果や新たな価値を広く発信し、共創のDXの連鎖につなげていく必要があると考えています。そこで、市が提供するオンライン手続などのゲート(入口)であり、「横浜DX戦略」の各取組を発信する場でもある総合ポータルサイトを、令和5年度に開設する予定です。今後も引き続き、「横浜DX戦略」に基づき、より利便性の高い市民サービスの提供に努めていきます。
◇愛知県一宮市
【受賞の理由】
「デジタル市役所」「手続きコンシェルジュ」というアイコンから、オンライン申請等ができることが分かりやすく表示されています。サイト全体的に、利用者が一目見て分かりやすいように工夫されている点を総合的に評価しました。
【受賞コメント】
一宮市総合政策部広報課
課長・木野和美さん(受賞時)
Q:選出の理由に関して、受賞の感想をお聞かせください。
サイト構築時に特に力を入れた「デジタル市役所」「手続きコンシェルジュ」が、今回の受賞につながったことは大変うれしく思います。昨今注目の「行政手続きのDX」では、市役所に足を運ぶ必要がなくなり、ウェブサイトが住民の皆さまの最も身近な窓口となります。これからの行政には、オンライン申請が誰にでも簡単に使えるようにするのはもちろん、その土台となるウェブサイトもストレスなく見やすいものであることが求められます。よりよいウェブサイトであると感じていただけるよう、今後もウェブサイトの構成を見直し続けていきたいと思います。
Q:一番のこだわりポイントは?
「利用者がストレスなく閲覧できる」ポイントをこだわりました。一宮市の場合、全体の約7割の方がスマホからウェブサイトを閲覧しています。スマホでも見やすいレスポンシブデザインを採用し、リンクボタンを大きく配置したり、親指でタップしやすいように画面の両下端によく使う機能を配置したボトムメニューを設置したりしました。また、目的の情報にたどり着きやすいことに加えて、関連する情報にも触れられるよう「レコメンド機能」を採用し、利用者の回遊性の向上を図りました。
Q:今後の展開予定は?
一宮市では「” 書かない窓口”(=スマート窓口)」を推進しています。市役所の窓口で記入する必要がある手続きについて、その記入する内容を事前にオンラインで入力してもらうことで、スピーディに手続きできるシステムです。オンライン化できる手続きはもちろん、窓口での記入が必要な手続きでも、できるだけペーパーレスで処理することで、住民の皆さまにとっても市職員にとってもタイパ・コスパに優れた市役所の実現を目指しています。
◇広島県東広島市
【受賞の理由】
電子申請システムを導入されている他、「市民ポータルサイト」で、インターネットにより小中学校と市役所とつなぐ取り組みを行われています。LINEやメール等の利用者にとって分かりやすいツールを使用して通知が可能で、学校から休校連絡などの各種お知らせ等から地域の情報まで、1つのサイトに集約されている点を評価しました。
【受賞コメント】
東広島市 総務部
DX推進監・橋本 光太郎さん
Q:選出の理由に関して、受賞の感想をお聞かせください。
本市では、インターネットにより市民と市役所や学校をつなぐプラットフォームとして市民ポータルサイトを運用しています。市民の方本人やお子様の情報を登録いただくことで、利用者に必要なサービスをお示しするものです。また、行政や学校が提供するサービスを本ポータルサイトに集約することで、「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化(デジタル社会)」を目指しているところですが、本取り組みが評価され、このような賞を受賞できたことを光栄に感じています。
Q:一番のこだわりポイントは?
利用者の属性やニーズに合った情報を提供する点です。市から配信される市政情報の内、興味のある分野を登録することで、それに関係する情報だけを受け取ることができます。さらに、お住まいの地域や関係する地域を登録することで、登録した地域の防災情報のみを受け取ることができます。その他にも生活に役立つ情報を配信していますが、いずれも受信登録を自分好みにカスタマイズできることが特徴です。また、LINEと連携することで、市民ポータルサイトからのお知らせをLINEで受け取ることができる他、LINE IDを使って簡単にログインすることができます。
Q:今後の展開予定は?
これまでは、就学前から中学校に通うこどもを持つ保護者を主なターゲットとしていましたが、今後は大学生や年配の方をターゲットとし、地域に寄り添ったサービスを展開することで、幅広い年代の方に使っていただけるものにしていきます。また、本市が開発したサービスを他自治体でも使っていただき、本サービスや取り組みに賛同いただける自治体を増やしていきたいと考えています。それにより、本市だけでなく、全ての市町村の方や団体がつながるプラットフォームになれればと思います。
👑『子育てタウン』賞
アスコエパートナーズが提供する「子育てタウン」では全国的に実施されている標準的な行政サービスを掲載するとともに、自治体ごとに地域課題に応じて工夫された行政サービスや様々なコンテンツを掲載しています。それら行政サービスのうち、金銭的支援の充実、保育支援、就職支援、家族の子育て支援等、子育てしやすくする工夫された行政サービスの提供状況・独自コンテンツの掲載等について評価しました。
【受賞自治体】 ●静岡県静岡市
◇静岡県静岡市
【受賞の理由】
子育てに関する様々な支援の情報が幅広く掲載されています。特に自治体が実施主体のものだけでなく「マイ助産師」「産科医療費補償制度」など他の支援団体の情報や、「子ども未来サポーター」「うつ専門電話相談」「メンズほっとライン静岡(男性相談)」「にじいろ電話相談」など子育て中のパパ、ママ、子ども自身それぞれの立場に沿って必要な相談先が数多く掲載されており、孤立させない、一人で悩まないよう子育てを支える支援が数多くありました。
【受賞コメント】
静岡市子ども未来局子ども未来課企画係 望月光輝さん
Q:選出の理由に関して、受賞の感想をお聞かせください。
妊娠・出産・子育てに関する悩みは(お子さん自身の悩みも含めて)多岐にわたるため、それぞれの悩みに応じた相談先や情報を幅広く掲載する必要があると考えており、今回、そのような点を評価していただいたことを嬉しく思います。ただし、ページの見やすさや必要な情報の探しやすさなど、まだまだ改善すべきところもあり、「ちゃむしずおか」自体を知らない方も数多くいると思います。「ちゃむしずおか」を閲覧すれば、子育てに関する必要な情報が得られると思ってもらえるよう、サイトの認知度や使いやすさをもっと向上していきたいと考えています。
Q:一番のこだわりポイントは?
アクセス数が多く市民の方々の関心が高い情報(子育てイベント情報や入園案内、児童クラブの申込など)は、トップページのスライドバナーや注目記事に掲載し、すぐ目に入る分かりやすい場所に掲載しています。また、バナーデザインを工夫したり、写真を使うなどして、子育て世代の方の興味を引けるように意識して作成しています。
Q:今後の展開予定は?
現代の子育て世帯はスマホユーザーが大多数を占めていますが、現状のサイトはまだまだスマートフォンに適したデザインになっていないと感じています。そのため、サイト改修によって、サイトデザインの変更、イベントや施設情報の検索機能を充実させるなど、より利用しやすいサイトにしていきます。また現在もSNSの活用としてTwitterを運用していますが、今後は市公式LINEでの子育て情報発信も行い、LINEのメッセージから詳しい情報はサイトの該当ページにリンクさせるなど、SNSとの相乗効果で市の子育て情報発信を更に充実させていきます。
👑『UMカバレッジ』賞
アスコエパートナーズが開発した「ユニバーサルメニュー(UM)」の設計思想に基づく情報網羅性に関するサ イト評価を行いました。UMカバレッジとは、全国的に実施されている行政サービスのカタログであるUMを基準に、自治体webサイトにサービスの説明ページがあるかどうかを調べ、情報(ページ)の抜け漏れを診断するものです。今回はUMの中から、住民の関心が高い主要なサービスに絞った簡易版の診断を実施しました。
【受賞自治体】 ●埼玉県さいたま市 ●東京都千代田区 ●東京都武蔵野市 ●静岡県静岡市
【選出の理由】
全国の過半数の自治体サイトが70%以上のカバー率をマークする中、接戦で、4自治体がカバー率92%で同率1位に輝きました。自治体Webサイトはスマートフォンに対応したUIが主流となり、デザインやナビゲーション機能なども進化しています。一方、辿り着きやすさにはまだ改善の余地があり、UMカバレッジ率が高くなることが利用者に必要な支援が届きやすい(探しやすい)ことの指標になります。
👑情報構造設計賞
児童手当などの行政サービスの内容を、より分かりやすくするための文章の構成について評価しました。分かりやすい情報は、見出しの付け方や順番などの、「構造」も重要な役割を果たします。
【受賞自治体】 ●埼玉県川越市
【受賞の理由】
何が書かれているかが一目でわかる見出しが付けられ、知りたいことがどこに書いてあるのかがわかりやすいページが多いです。また説明の順番も、初めに大まかな説明(概要)があり、興味を持ったら詳しい内容(支給金額など)、自分が利用できるかどうか(対象者)、利用できる場合、何をすれば利用できるのか(手続き)、というように、読者が考える流れに沿って書かれていて、前後に行き来することなくスムーズに読むことができました。
【パブリックエクスペリエンスアワード2022に関するお問い合わせ】
株式会社アスコエパートナーズ 広報担当
pr@asukoe.org