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2022年3月2日

【都市OS】スマートシティ・スーパーシティ構想に不可欠なデータ連携基盤

都市OSとは、地域の枠を越えたサービス連携や各都市における成果を横展開するための仕組みです。コンピュータのオペレーティングシステム(OS)に置き換えて、都市OSの目的や役割を示し、日本における都市OSの要件やメリット、今後の課題について紹介します。

そもそも「OS」とはなにか?

そもそも「OS」とはなにか?
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OSとは、オペレーティング・システム(Operating System)の略語で、コンピュータがその機能を果たすために不可欠なソフトウェアです。ユーザーの操作によって、コンピュータがどのように動作すべきかを定め、CPUやメモリなどハードウェアの効率的な運用を司ります。このためOSは「基本ソフトウェア」とも呼ばれ、OS上で動作して特定の機能や役割を担う「応用ソフトウェア」と区別します。Microsoft社の「Windows」やApple社の「Mac OS」が「基本ソフトウェア」であり、「Excel」や「PowerPoint」が「応用ソフトウェア」です。

OSには、2つの役割があります。ひとつは、コンピュータを構成する以下の装置を正しく制御して、効率的な運用を図ること。もうひとつの役割は、API(外部との連携を可能にする窓口)という機能を介してコンピュータの装置を「応用ソフトウェア」から操作できるようにすることです。

  • 入力装置(キーボード、マウスなど)
  • 記憶装置(ハードディスクなど)
  • 出力装置(モニター、プリンタなど)
  • 演算装置・制御装置(CPU)
  • ネットワーク(WiFiなど)

都市にとっての「OS」とは?

都市にとっての「OS」とは?
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ここでは、コンピュータを構成する各装置が、都市におけるどのようなものに相当するのかを見ていきます。

都市の入力装置

都市のさまざまな情報を収集するための装置です。都市には、防犯・防災のための監視カメラをはじめ、多くの情報をリアルタイムで取得可能な設備が整備されています。セキュリティゲートや道路の通過履歴や駐車場の空き状況など、都市に関するあらゆる情報源が、都市の入力装置になります。

都市の出力装置

都市に関する情報を発信したり、遠隔操作によって人々の行動や機器の動作を制御したりする装置です。デジタルサイネージをはじめ、信号機やエレベータなども都市の出力装置になります。

都市の記憶装置

取得した都市に関する情報をストックします。入力装置によって収集された情報データを安全に管理するために、クラウドストレージを都市の記憶装置として活用しています。

都市の演算装置

入力装置によって集められた情報を、AI技術を活用して解析したり、出力装置を制御したりするのが、都市における演算機能になります。たとえば、監視カメラの映像などから交通渋滞を感知すると、その原因を特定したり、最適化のための演算を行い、渋滞を解消するための交通管制を実施します。

都市のネットワーク

5G通信などの情報通信技術によって、都市のネットワークを形成します。センシング技術の進化によって急増する入力情報に対応し、安定した通信環境を実現するために、高度な通信ネットワーク技術が求められます。

このように、都市OSをコンピュータのOSが果たす役割に置き換えてみると、「都市のリソース管理・運営管理の効率化」、「都市のAPIを通じたイノベーション」の2つが、都市OSの目的であることがわかります。

都市OSに求められる役割

国家戦略特区データ連携基盤/「スーパーシティとデータ連携基盤について(2019)」内閣府
国家戦略特区データ連携基盤/「スーパーシティとデータ連携基盤について(2019)」内閣府

日本政府は、日本社会が目指すべき未来社会の姿を「超スマート社会」と名づけ、その実現に向けた取り組みとして「Society 5.0」を推進してきました。この「スマートシティ」の実現に向けた取り組みが進むにつれ、以下のように「都市OS」という言葉がたびたび登場するようになってきました。

サービス連携および都市間の連携を実現するために、システム的な共通の土台を用意します。これにより、さまざまな事業者や他の地域が提供するサービス・機能を自由に組み合わせ活用できるようになります。この共通の土台のことを「都市 OS」と呼びます。

スマートシティリファレンススアーキテクチャの使い方|内閣府

スーパーシティは、様々なデータを分野横断的に収集・整理し提供する「データ連携基盤」(都市OS)を軸に、地域住民等に様々なサービスを提供し、住民福祉・利便向上を図る都市。

スーパーシティとデータ連携基盤について(2019) 内閣府

都市OSは、日本のスマートシティの実現に向けた課題から都市 OSの特徴を整理し、そこから「Society 5.0」に基づく日本のスマートシティの考え方や海外スマートシティアーキテクチャ事例を参考に設計された。

スマートシティリファレンスアーキテクチャホワイトペーパー 内閣府

なお、国が発信する都市OSの資料には、以下の言葉がたびたび登場します。

スマートシティリファレンスアーキテクチャ(Smart City Reference Architecture)

「地域のスマート社会化を実現するための設計図」のこと。政府はスマートシティリファレンスアーキテクチャの発表によって、スマートシティの設計手法を示しました。

詳しくは、スマートシティリファレンスアーキテクチャの使い方をお読みください。

スーパーシティ

「スーパーシティ」とは、都市の入力装置から得られた地域の情報や行政が保有するデータなどから各地域が抱える課題を抽出し、市民の目線によって便利で暮らしやすい地域「まるごと未来都市」の実現を目指す取り組みのことです。

※スーパーシティとスマートシティの定義は下図のとおり厳密には異なりますが、日本が目指すべき未来社会像は共通するものなので、本記事では同義語として使用しています。

「スーパーシティ」は「スマートシティ」の違い
「スーパーシティ」は「スマートシティ」の違い

以下の記事もお読みください。

スマートシティ①|取り組むべき背景と期待される効果 

スマートシティ②|「スマートシティ化」で各分野はどう変わる? 

スーパーシティ|「スマートシティ構想」をブーストさせる「まるごと未来都市」構想

都市OSで解決したい3つの問題点

日本社会は、各地域をスマートシティへと進化させていくにあたって、以下の3つの問題に直面しています。

①システムの個別化で再利用・横展開しにくい

これまで各地域の自治体や企業などが、組織や分野ごとにシステム構築を進め、それぞれ個別のシステムを採用していました。このため、ある都市で使いやすい便利なサービスが導入されたとしても、それを他の地域に横展開して再利用することは困難でした。

②分野横断のサービス構築が困難

また同様の理由から、同一域内でも分野や組織間を横断するようなデータの利活用が難しく、分野横断の新たなサービスの構築が困難であるという課題がありました。

③機能拡張に膨大なコスト・労力がかかる

さらにシステムが個別化しているために、機能拡張によるコストや労力が膨らみ、継続的なシステムの更新がままならず、容易にサービスを進化させることができないという課題も存在しています。

日本版「都市OS」の要件とは

スマートシティリファレンスアーキテクチャ/「スマートシティリファレンスアーキテクチャホワイトペーパー」内閣府
スマートシティリファレンスアーキテクチャ/「スマートシティリファレンスアーキテクチャホワイトペーパー」内閣府

日本におけるスマートシティの実証事業は、2012年ごろから各地で展開されてきましたが、規格の共有や標準化がなされないままに進められてきたために、注目すべき事例やサービスの横展開にはつながりませんでした。この点を改善するために政府は、2020年3月に都市OSの要件や具体的な設計手法をまとめた「スマートシティリファレンスアーキテクチャ」を発表しました。そこに示されたのが、以下の3要件です。

要件1|相互運用~つながる

地域の枠を越えたサービス連携や各都市における成果を横展開するためには、相互につながりやすい仕組みづくりが必要です。共通の機能やインターフェイスを備え、外部に公開可能なシステムやサービスとすることで、他の都市や組織との連携がしやすくなります。

要件2|データ流通~ながれる

地域ごとに蓄積された幅広いデータを、分野や組織の垣根を越えて流通し、連携できる仕組みづくりが欠かせません。さまざまなデータをひとつの共有された論理的なデータとして扱えるようにすることで、都市OSは、地域内外の多様なデータを仲介することができるようになります。

要件3|拡張容易~つづけられる

都市OSが、継続的に維持・発展し続けるためには、それぞれの地域が目指すべき将来像や解決すべき課題に合わせて、機能拡張や更新を容易にする仕掛けが必要です。それぞれの機能間の結びつきが緩やかなシステムとして構築することで、必要な機能のみを拡張・更新することができるようになります。

都市OSのメリット

ますます複雑化する地域の課題を解決するためには、特定の分野別に課題解決を図るのではなく、組織間の垣根を越えて分野横断的なデータ連携を図り、新たなサービスの創出に向けて動き出すことが求められます。より積極的にデータを利活用するための基盤となる都市OSの構築にあたっては、以下のメリットを意識して取り組むことが大切です。

メリット1|サービスの連携

さまざまな個別サービス間での連携を可能にすることで、ワンストップで複数のサービスを利用できるようになります。会津若松市では、都市OSのこのようなメリットをいかして、市民向け地域ポータル「会津若松プラス」を公開。市民向けのさまざまなサービスを、利用者の属性や嗜好に最適化した情報を表示することで、利用率の高いシステムとしています。

メリット2|都市間の連携

他の都市との連携を深めることで、たとえば居住地と勤務地を行き来するような住民に対しても、利便性の高いサービスを提供することができるようになります。また、データ分析に広域から収集したデータを用いることで、より効果的な新規のサービスの構築に取り組むことができます。高松市では周辺自治体と連携し、災害時に広域での情報共有を可能とするシステムを構築。各種防災情報を一元化することで災害時の迅速な意思決定を支援します。

メリット3|分野間の連携

分野間や官民の垣根を越えて連携することで、より高度な分析結果を活用した有益なサービスが構築できるようになります。たとえば行政のハザードマップと民間の道路通行実績を組み合わせることで防災対策の高度化を図ることができます。また、札幌市では健康なまちづくりのために、分野の垣根を越えたデータ連携基盤を構築。歩行や健康状態の改善、講座への参加など、参加者の行動や成果に応じたインセンティブを付与するプログラムを導入しました。

都市OS導入にあたっての今後の課題

都市OS導入にあたっての今後の課題
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都市OSの構築に向けて動き出した自治体の多くは、現状では実証段階にあり、さまざまな課題を抱えながら本格的な導入に向けた取り組みを進めています。ここでは、実証から実装へと移行するにあたって検討すべき点や今後に向けた課題を整理します。

都市OSの確実な検証と実現

都市OSの本格的な導入にあたって大切なのは、導入のメリットやその効果を明確に定義し、地域の現状や利用者となる市民の視点に立って新たなサービスを構築することです。

人と資金の調達

とくに中小規模の自治体においては、新たなサービスや施策を講じるための人材の確保や資金調達の面で困難が生じます。サスティナブルな都市OSの構築と運用のためにも、導入目的に合わせて機能を段階的に拡張していくなど、長期的な視点に立った取り組みが求められます。また、データ連携基盤を近隣都市と共同で構築することも、人材確保や資金調達の面でも有効です。

既存の国・自治体システムとの連携

国や自治体が保有する情報との連携は、デジタル庁の創設に伴い、確実に前進することが期待できます。それらの動向を注視しつつ、今後整備されるデータ連携基盤との接続やデータの利活用に向けて、それぞれの自治体が整えるべき仕組みについて検討しておくことが重要です。

住民合意のデータ利用

新たな仕組みやサービスの導入にあたっては、住民データの活用に対する合意形成が大切です。プライバシーや情報活用の観点から丁寧な説明を行い、安全・安心な情報の利活用を担保するセキュリティ対策を施す必要があります。

都市OSが備えるべき機能やその目的を考えれば、国内にいくつものOS(データ連携基盤)が存在する必要はありません。今後、各自治体に都市OSの導入が進むものと考えられますが、その前提として、構築・整備の規範となるルールの設定や各自治体が利活用しやすい開発環境の整備が進むことが期待されます。

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