スマート自治体①|2040年問題に備える新しい自治体行政のあり方とは?

スマート自治体①|2040年問題に備える新しい自治体行政のあり方とは?

「スマート自治体」とは、デジタル技術を活用して、より効率的な行政サービスを提供する次世代型の自治体像をいいます。今回は、2040年頃に迫りくるとされる自治体行政の危機について解説し、この危機に備える自治体行政の考え方について紹介します。

「スマート自治体」とは?

「スマート自治体」とは?
Designed by Freepik

AI(人口知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの先進技術を活用することで、自治体職員が行う定型業務を自動化したり、標準化された共通基盤を用いた効率的なサービス提供を行う次世代の自治体像を「スマート自治体」といいます。この言葉は、総務省が主催する自治体戦略2040構想研究会(2017年10月~)が2018年7月にまとめた「自治体戦略2040構想研究会第二次報告」のなかに多く登場しています。

「スマート自治体」で立ち向かう2040年頃に訪れる自治体行政の危機とは

「スマート自治体」で立ち向かう2040年頃に訪れる自治体行政の危機とは
Designed by Freepik

2040年には、団塊の世代(出生数260〜270万人/年)・団塊ジュニア世代(出生数200〜210万人/年)が高齢者となっていて、65歳以上の高齢者人口がピークを迎え、日本の総人口は毎年100万人近く減少することが予想されています。このことは自治体の税収や行政需要に大きな影響を与えることから、総務省はこの人口減少を2040年頃にかけて迫りくる国内行政の危機として捉え、以下の3つの柱で整理しています。

若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏

2040年にかけて急激な高齢化局面を迎える三大都市圏のなかでも、とくに東京圏では医療・介護のニーズの増加率が全国で最も高くなり、膨大な医療・介護サービスを提供しなければならなくなります。そして、医療・介護人材を全国から確保しようとすれば、若者を中心に地方圏からの人材流入がますます増大することになるでしょう。

また、東京圏には地方圏に比べて子育ての負担感につながる構造的な要因があるため、適切に対処しなければ少子化に歯止めがかからなくなります。

一方、地方圏では、生産拠点の海外移転などによって製造業が衰退し、労働集約型のサービス業が多く立地しています。企画、デザイン、ブランディングといった機能の多くを東京に依存しているため、サービス移入による資金の流出が常態化しています。人口減少と高齢化が進む中山間地域では、集落機能の維持や耕地・山林の管理が困難になるおそれがあります。

標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全

世帯主が雇用者となって生活給を得るという従来型の世帯主雇用モデルは、もはや標準的な就労形態とはいえなくなっています。ライフステージに対応して、男女ともに無理なく活躍できる柔軟な就労システムへの再編が求められますが、これまでの就労形態と紐づいた各種制度が足かせとなり、起業などによる産業の新陳代謝が低調のままでは、さらなる生産性の向上には限界があると考えられています。

団塊ジュニア世代とこれに続く世代は、バブル崩壊後の就職氷河期に社会に出た世代です。これらの世代の無業者、長期失業者の割合は、他の世代に比べて高く、このまま経済的に自立できないで高齢化していけば、社会全体として大きなリスクを抱えることになります。

また、人口減少が進むなかで、若者の労働力は希少化していきます。経済成長を牽引するような高付加価値で生産性の高い領域で活躍する人材を確保するために、官民や組織の枠を超えた幅広い交流を進め、多様な経験のなかで若者たちが能力を高めていけるような総合的な視点からの人材育成が求められます。

スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ

人口減少が急激に進むなかで、多くの都市で空き家・空き地がランダムに発生する「都市のスポンジ化※」が顕在化しています。2040年に向けて、この状態が放置されると、加速度的に都市の衰退を招くことになるでしょう。東京圏では、郊外ベッドタウンのスポンジ化と都心居住が進んでいますが、このような過度の人口集中は首都直下地震発生時の大きなリスクになります。また、高度経済成長期以降に整備されたインフラの老朽化が進んでいます。しかしながら、人口減少が進むなかでは、すべてのインフラをこれまで通りに維持・管理し続けることは不可能になるでしょう。

※都市の大きさが変わらないまま人口が減少し、都市内に使われない空間が小さな穴があくように生じ、密度が下がっていくこと。

「スマート自治体」は、2040年危機に備える自治体行政の4大方針のひとつ

「スマート自治体」は、2040年危機に備える自治体行政の4大方針のひとつ
Designed by Freepik

自治体戦略2040構想研究会は、その第二次報告において、圧倒的な労働力(とくに若年労働力)不足を前提とする人口縮減時代のパラダイム(考え方・認識)への転換が必要であるとして、新たな自治体行政の考え方を以下の4つの方針によって打ち出しています。

スマート自治体への転換

まず、自治体の経営資源が制約されるなかで、従来の半分程度の職員でも自治体が担うべき機能を発揮し続けるためには、すべての自治体がAIやRPAなどの先進技術を積極的に導入し、事務作業を自動化したり、標準化された共通基盤を用いた効率的なサービス提供に努めることが必要であるとしています。

このような新しい自治体の姿を「スマート自治体」と呼び、「スマート自治体」への転換を推し進めることで、現在と変わらない質の高い公共サービスを提供し続けようとしています。

公共私による暮らしの維持

「公」としての自治体は、新たな公共私の関係を構築するためのプラットフォーム・ビルダーとしての役割を担うべきだとしています。その際の自治体職員は、関係者を巻き込み、まとめていくプロジェクトマネジャーとなる必要があります。

また、社会全体が労働力の供給に制約を受けるなかで、新たな「私」としてシェアリング・エコノミーなどの活用によって、誰もが支える側にも支えられる側にもなれる環境を整え、市民生活の維持に不可欠なニーズの充足に向けて、必要な技能を習得したスタッフが随時対応する組織的仲介機能が求められるとしています。

さらに、新たな「共」として地域を基盤とした法人を設けて、住民相互の共助の場を創出し、活躍の場を求める定年退職者や就職氷河期世代などが担い手となって、人々の暮らしを支えるサービスを提供するしくみが求められます。

圏域マネジメントと二層制の柔軟化

個々の市町村が行政のフルセット主義から脱却し、圏域単位での行政をスタンダードにして、戦略的に圏域内の都市機能を守る必要があるとしています。現状の連携では対応できない深刻な行政課題への取り組みを進め、より広域の課題への対応力を高めるしくみが求められています。

圏域での政策実行を促すためには、個々の制度に圏域をビルトインし、連携を促すルールづくりや財政支援、連携しない場合のリスクの可視化が必要になります。このため、圏域単位の行政を進めることについて、真正面から認める法律上の枠組みを設け、中心都市のマネジメント力を高め、合意形成を容易にすることが必要になります。

また、都道府県・市町村の二層制を柔軟化し、それぞれの地域に応じて、都道府県と市町村の機能を結集した行政の共通基盤の構築が必要になるとしています。核となる都市がない地域では都道府県が市町村の補完・支援に本格的に乗り出すことが必要であり、都道府県や市町村の垣根を越えて、希少化する人材を柔軟に活用するしくみが求められます。

さらに、防災や医療、介護など、遠隔地との助け合いが必要な行政分野では、圏域を越えた広域分散型の自治体間連携によって、行政サービス提供の持続可能性を高め、地域間の新たな人の流れを創出することが期待されます。

東京圏のプラットフォーム再編

東京圏では、市町村合併や広域連携の取り組みが進んでいません。早急に近隣市町村との連携やスマート自治体への転換をはじめとする対応を講じなければ、人口減少と高齢化の加速に伴って、危機が顕在化することになると警鐘を鳴らします。社会経済的に一体制のある圏域の状況は、三大都市圏ごとに異なり、最適なマネジメント手法について、都市圏ごとに枠組みを考える必要があります。

東京圏のプラットフォームとして、利害衝突がなく連携しやすい分野にとどまらず、連携をより深化させ、圏域全体で負担の分かち合いや利害調整を伴う合意形成を図る必要があります。今後も日本経済の有力な成長エンジンとしての役割を果たしていくために、東京圏全体で対応が必要となる深刻な行政課題に関しては、国も含め、圏域全体でマネジメントを支えるようなプラットフォームの検討が必要になります。

少子高齢化が進むなか、生産年齢人口の減少による圧倒的な労働力不足は、もはや避けられない状況です。こうしたなかで自治体は、現在と変わらない行政サービスを提供し続けるために、自治体行政の考え方を大きく転換することが求められています。自治体戦略2040構想研究会が示した4大方針をもとに、それぞれの自治体が直面することになる課題に備えなければなりません。