公金受取口座登録制度|公的給付を迅速に受け取れる制度は国民に受け入れられるか?

公金受取口座登録制度|公的給付を迅速に受け取れる制度は国民に受け入れられるか?

公金受取口座登録制度は、金融機関名や口座番号などの預貯金口座情報を、マイナンバーとともに国(デジタル庁)に任意で登録する制度で、2022年3月28日よりマイナポータルでの登録が開始されました。今回は、この制度が創設された背景や制度の概要、口座登録のメリットと注意点などを紹介します。

そもそも「公金受取口座登録制度」の「公金」とは?

そもそも「公金受取口座登録制度」の「公金」とは?
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公金受取口座登録制度によって、国民が公金の受取口座を事前に登録することができるようになりました。この事前登録によって公金の申請や支給にともなう作業や業務を効率的に行うことができるようになります。まず、ここでいう「公金」とは、どのようなものなのかを確認しておきましょう。

「公金」とは「公的給付」の略

「公金」とは、国家や行政が所有する金銭のことで、国や地方公共団体がその目的を達成するために用いられます。「公金受取口座登録制度」の「公金」は「公的給付金」のことで、特定の条件を満たした人が申請することで給付されます。たとえば、全国の各自治体には以下のような公的給付金の制度があります。

  • 出産育児一時金
  • 出産手当金
  • 育児休業給付金
  • 児童手当
  • 介護休業給付金 ほか

特定公的給付とは?

2020年には、コロナ禍の経済対策として1人当たり10万円特別定額給付金の支給が実施されました。この特別定額給付金のように、法律の規定によらずに閣議決定などに基づいて支給が実施される緊急時の公的給付金を、「特定公的給付」として以下のように定義しています。

内閣総理大臣が指定する以下に該当するもの

①国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある災害若しくは感染症が発生した場合に支給されるもの

②経済事情の急激な変動による影響を緩和するために支給されるもの

公金受取口座登録制度とは

ここでは、公金受取口座登録制度が創設された背景、制度の概要について紹介します。

コロナ禍の大混乱をふまえて生まれた制度

2022年1月に公布された「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(公金受取口座登録法)」の法案提出時に作成された予算関連法案資料では、法案の概要を以下のとおり定義しています。

公的給付の迅速かつ確実な支給のため、預貯金口座の情報をマイナンバーとともにマイナポータルにあらかじめ登録し、行政機関等が当該口座情報の提供を求めることができることとするとともに、特定公的給付の支給のためマイナンバーを利用して管理できることとする。

「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案の概要」内閣府

つまり、公金受取口座登録制度は、金融機関の預貯金口座(1人1口座)を、給付金などの受け取りのための口座として、マイナンバーとともに国(デジタル庁)にあらかじめ登録する制度です。口座情報は、緊急時の給付金のほか、年金、児童手当、所得税の還付金ほか、いろいろな給付金の支給事務で利用されます。

2020年に実施された1人10万円の「特別定額給付金」支給では、紙の書類提出による申請者の手間や自治体の業務負荷の重さ、オンライン申請の不備など、さまざまな課題が露見しました。今後、このような混乱を招くことのないよう、口座を事前に登録しておくことで、迅速で確実な給付を実現しようとするものです。

マイナポータルからの登録には、マイナンバーカードが必要で、金融機関名や口座番号などを入力し、利用規約や個人情報の取り扱いについて同意するだけで、登録は完了します。詳しくは、以下を参照ください。

「マイナポータルによる公金受取口座の登録方法」デジタル庁 

3月から公金受取口座登録がスタート

デジタル庁は「マイナポータル」における公金受取口座の登録を、2022年3月28日より開始しました。公的給付の迅速かつ確実な支給のために、預貯金口座の情報をマイナンバーとともにマイナポータルに登録することで、申請時の添付書類の省略化、行政の給付事務の簡素化を実現しようとしています。

公金受取口座登録のメリット

公金受取口座を登録することで期待されている具体的なメリットについて見ていきましょう。

給付金や還付金申請の手間が減る

公金受取口座を登録しておくことで、公的給付や還付を申請する際に、口座番号の記入や通帳のコピーなどを準備する必要がなくなります。具体的な対象は、「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律施行規則」を参照ください。

給付金や還付金が速やかに受け取れる

公金受取口座を事前に登録しておくことで、申請の都度、必要だった自治体での書類確認の手間が不要に。申請の手間や自治体の作業手間が軽減されるため、給付金や還付金の迅速な受け取りが可能になります。

マイナポイントがもらえる

2022年1月1日よりスタートしたマイナポイント第2弾。公金受取口座を登録すると7,500円相当のマイナポイントが付与されます(2022年6月31日開始)。

自治体の作業負荷も大幅に軽減

登録口座は、口座の存在が確認済みのため、口座情報の確認が不要となり、給付事務の作業負荷が軽減されます。登録口座は事前に口座存在が確認されているので、振込不能のトラブル対応もなくなります。

公金受取口座登録のデメリット・注意点

公金受取口座登録のデメリット・注意点
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公金受取口座を登録する際の注意点(デメリット)についても確認しておきましょう。

登録できる口座は一つだけ

公金受取口座は1口座しか登録できません。給付金や還付金の種別などに応じて、異なる口座に振り込んでもらうというような対応はできません。

給付申請は別途必要

公金受取口座の登録をもって、給付金や還付金の申請が完了するわけではありません。手続きが簡素化されるとはいえ、別途、給付申請などは必要です。

「預貯金口座付番制度」とはどう違う?

公金受取口座登録制度と「預貯金口座付番制度」とはどう違う?
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公金受取口座登録制度と混同しやすい制度に、預貯金口座付番制度があります。預貯金口座付番制度についてもおさらいしておきます。

「預貯金口座付番制度」とは

預貯金口座付番制度は、2021年5月に施行された「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」によって創設された、預貯金口座とマイナンバーを紐づけて管理する制度です。

この制度は、マイナンバーを金融機関に届け出る制度であり、給付金などを受け取るための預貯金口座を国に登録する公金受取口座登録制度とは異なります。

預貯金口座付番制度には、預貯金者がマイナンバーを利用した預貯金口座の管理を希望する場合に金融機関がマイナンバーで検索できるように管理する規定(マイナンバーの利用による預貯金口座の管理に関する制度)や、災害時・相続時に預貯金者または相続人の求めに応じて預金保険機構が口座に関する情報を提供する規定(災害時又は相続時における預貯金口座に関する情報を提供する制度)などがあります。

預貯金口座に付番することによって、将来的には相続時や災害時に、一つの金融機関の窓口において、マイナンバーが付番された預貯金口座の所在を確認できるようになるとされています。しかしながら、現在はあくまでも預金者の意思に基づくものであって、利用する場面や利便性が限定的であり、この制度の利用は広がってはいないようです。

口座登録は進むのか? 国民の不安と国の思惑

口座登録は進むのか? 国民の不安と国の思惑
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番号制度の本格的なスタートは、2016年1月からのこと。マイナンバーカードの交付が開始され、社会保障や税金の申請手続きなどに個人番号が用いられるようになりました。しかし、口座付番(預貯金口座をマイナンバーと紐づけること)については義務化されていないため、付番が順調に進んでいるとはいいにくい状況です。その背景にはどんな事情があるのでしょうか?

「国に口座を管理されたくない」という国民性

日本人には、国(税務署など)に、口座情報を知られたくない、管理されたくないという思いが根強くあるようです。もともと個人情報にセンシティブな国民性から、マイナンバー制度自体の普及も進んでいないという現状があります。本制度についても漠然とした不安を感じている人もけっして少なくはないでしょう。しかしながら、その不安は誤認識によるものも多く、デジタル庁もその払拭に追われています。

国の動きも一体感を欠いている

金融機関や金融庁も、口座に付番することには消極的といわれています。口座に付番するためには莫大なコストと労力がかかるため、金融機関としては、そのような負担は避けたいところ。また、金融機関を監督する金融庁にも、ゼロ金利政策により収益が低迷している金融機間に付番を押し付けることはしたくないと考えているようです。

口座付番を歓迎するのは税務当局。適正で公平な課税のために、各種税務調査に口座情報を活用したいという思惑はあるものの、自ら前面に立って口座付番を唱えることはしていません。そして政府も、国民の反発を恐れてか、いまひとつ強気になれないというのが現状です。

今後到来する生産年齢人口の圧倒的な不足を考慮するなら、マイナンバー制度の普及や公金受取口座の登録の必要性が増していくことは確実です。情報漏えいや政府による監視への不安が、登録の拡大を阻んでいるのだとすれば、まず、このような不安を取り除く措置に注力すると同時に、持続的な行政サービスの提供に不可欠な制度であることを、国民に理解してもらうことが先決です。