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令和元年に成立されたデジタル手続法により、各自治体のオンライン化への取り組みが本格化していますが、部署の壁、業務の煩雑さ、システムの問題等、様々な課題に頭を悩ませている自治体も多いはず。また、担当セクションは作ったものの、何から手を付ければいいのかわからず、なかなか進められないでいる自治体も。そこで、まずは第一ステップとして、手続きオンライン化をはじめる、または見直すにあたっての心得をまとめました。
まず必要なのはオンライン化の方針を決めること
手続きオンライン化に関しては、自治体ごとにどんな方針で進めるのか、方向性を考えることがカギになります。総務省の自治体DXの手順では、体制づくり⇒手続き選択⇒仕様決め⇒調達の4段階が示されていますが、それを進めるうえで、方針策定は大事な要素になります。
例えばある自治体では若手の社員が集って勉強会を重ね、「利用者中心の行政サービス」、つまりとことん利用者ニーズに寄って考えるという方針を策定しました。その方針のもと実際に各現場と交渉、「オンライン化」が何を指すのか(どこまで電子化するのか、どこまで以降はやらない等)、手続きを可視化することから手を付けていきました。このケースでは、押印と本人確認がないものから進めることを決め、体制としては、情報政策課の中に推進室をつくり、当初は兼務もありましたが、徐々に人を増やしていきました。
システムに関しても、導入するシステムは仕様を統一することが望ましいけれど統一することにかえって時間やコストがかかるのであれば、職員人件費という観点を考慮し、スピード感を持って目的達成することに舵を切るという方針に。
ここまで方針がはっきりしていると、最初は1つの課からはじめ、他の課へ拡大していくことができ、確実に進めていけます。
対象手続き選定のコツ
どの手続きから手を付けるか検討するために、まずは全庁でどのような手続きがあるか棚卸しすることで、すべての手続きを可視化することからはじめた自治体があります。
そのうえで、その自治体では、自治体側の視点だけでなく、誰が使うのか、利用者視点で手続きの特性を考え、手続きの選択をすすめていきました。DXを進めていくとその達成に気を取られ、住民の利用率が忘れられがちになることも多いので、これは非常に重要な視点です。
例えば、入力項目の数が少ないもの、添付書類や押印が不要なものなどから手を付け、絶対に来庁が必要な手続きに付随する手続きはオンライン化しても意味がないと割り切って優先順位を下げるなど、すぐはやらないものを決めたのも大切なポイントです。
まずは手続きを棚卸し・可視化することから、次のステップが見えてくるのです。手続きを選定する際には 、以下のポイントを参考にしてみてください。
現状の課題と未来のリスクを切り分けて対策を考える
オンライン化する手続きを選定する際のポイントは、まず、「現在の課題と未来のリスクを分けて考えること」です。いま目の前で発生している課題とそれに何か対処するときに起きるかもしれないことを整理して対策を考えることが必要です。
例えば、すでに発生している課題があったとします。それをオンライン化したときに、個人情報を記録すると、その記録が漏洩してしまうかもしれないリスクが考えられるとします。こういう場合には、システムなど技術的な問題も絡んでくるので、先に起こる可能性も含めて検討してしまうと、そこで止まってしまいます。今の課題と、未来のリスクを切り分けてひとつひとつ丁寧に対策を考える必要があります。
手続き見直しの難易度・期間をレイヤーごとに分ける
オンライン化したほうがいい手続きはたくさんありますが、優先順位をつけるのはなかなか大変です。
そこでおすすめしたいのが、手続きを棚卸しする際に、手続き分類でも業務分類でもいいのですが、単純に難易度とかかる期間で手続きを分けていくというやり方です。簡単ですぐできる/難しいけど短期でできる/簡単だけど時間がかかる/難しくて長期で取り組まないといけない、というレイヤーに分けると、レイヤーごとに対策は違ってきます。それぞれ対策を考えると、なりたい姿に向かうとき、まず手を付けて行くべきところはどこなのかが整理されると思います。
できない理由を明確にする
とはいえ、実際に動きはじめると、やろうとしたことができないという現実が結構出てきます。なぜできないのか、その原因もしっかり分析することで取り組むべき道筋が見えてきます。できない原因を1回聞いて終わりではなく、何度も何度も話を聞いて、考えて、ひたすら書き出していくと、できない理由が分類できます。
技術的にできないのか、法的な根拠がないのか、組織の問題か、データの問題なのか…。できない理由がいくつか明確になると、今度はそれを担当する担当課はどこか、相談するべき相手先はどこかが浮かび上がってくるので、そこを整理整頓することは重要です。
もしすぐに解決できない問題だったとしても、昔から比べれば今はこれだけ進化しているのだから、さらにこうなるかもしれない、こういうところまで到達したいという未来をポジティブに推察して、一旦、現状の課題を把握したうえで、取り組むことも大切だと思います。
どこを変えるのか?オンライン化する領域を決める
「手続きのオンライン化」と一言でいっても、その定義は明確ではありません。実際にその先で起こる何かをデジタル的に変革させることを織り込んでオンライン化がDX(デジタルトランスフォーメーション)になるのであれば、「オンライン化」も、全部を変革させる必要はなく、その手続きが行われている場所を変えようとすることでも、マインドセットを変えようとすることでも、DXだということです。
例えば、顧客の行動変容が可能な部分を、時間、マインド、正しい理解、実施方法、場所に分類すると、どの部分を行動変容させたいのかによって、取る対策は変わってきます。
また、その際、忘れてはいけないポイントは、顧客は住民と自治体職員の双方だということです。住民のことだけに意識が行きがちですが、職員の業務の何かが変わることを目標に置くのも意味があることです。
ユーザーからの評価を得る指標を決めておく
もう一つ、手続きオンライン化を進めるうえで大事なことは、顧客からの評価を図ることができるKPIを決めておくことです。評価軸の種類には、例えば、新しいことをはじめる、機会損失の軽減(いままで忙しくてできていなかったことができる)、利便性向上、継続性の担保、顧客コミュニティなどが考えられますが、何かプラスαになる評価軸を現場の方々と話し合いながら設定することも重要です。
手続きオンライン化の具体的すすめ方
以上、手続きオンライン化を進めるうえでの概論、心得をまとめましたが、ここから先は実践フェーズに入っていきます。やはり、オンライン化を進めるためには、今現状の手続きの棚卸しが必須です。自治体ごとに事情も違えば、重要な課題も違うので、現状を見ながら進めることが大事ですが、手続き棚卸しを実際にはどのように行うのか、また他自治体が具体的にどうやって進めたのか知りたいという方は、もっと具体的に知りたいという方はこちらをご覧ください。
⇒ 国・自治体向け行政DX導入支援 手続きアセスメント(行政手続き棚卸し)