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2021年6月9日

「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第三弾

デジガバサービス提供の際に自治体が利用してもよい情報とは?

本コラムでは、昨年末から今年2月にかけて、(株)サイバーエージェントさんと実施した、デジタルガバメントに関する住民ニーズ調査研究についてご紹介しています。

最終回となる今回は、デジタルガバメントのサービスを受ける際の個人情報や、どのようにサービスの情報を受け取りたいかという、メディアに関する結果についてレポートします。

前回、デジタルガバメントのサービスとして、マイナンバーカード、防災・防犯、新型コロナ関連サービスの3つの観点から利用意向をご紹介しました。調査ではさらに、これらのサービスを利用する上で自治体に提供してもよい情報について聞きました。質問項目は、年齢、住所、性別、職業、所得、世帯構成、病歴、往診歴、お薬手帳、子供の有無、母子手帳、ヘルスデータ(歩行数や心拍数、血圧データ)、要介護者の有無、ご自身の位置情報、その他、どのような個人情報も利用してほしくない――です。

結果、年齢、性別、住所、世帯構成、の順に数値が高くなりました。前回ご紹介したようなパーソナライズサービスの提供にあたっては、まず利用者の「年齢」と「性別」情報を活用しながら始めることで、利用者に受け入れてもらいやすくなるかもしれません。

図:自治体が利用してもよい個人情報
図:自治体が利用してもよい個人情報

一方、調査では、自治体に利用してほしくない情報についても聞きました。この質問は、回答者の自由な意思にゆだねるため、質問項目を選択する形式ではなく、自由回答形式としました。その結果、もっとも多く記入された情報は、「所得」と「位置情報」となりました。

図:自治体に使ってほしくない情報に関するワードクラウド
図:自治体に使ってほしくない情報に関するワードクラウド

次いで、住所、病歴、職業などが続いています。「住所」については、利用してもよいとの回答順位では3番目に入っていましたので、利用者によって賛否が分かれている項目だととらえることができます。反対に、所得、位置情報、ヘルスデータや病歴は、利用してもよい情報として挙げる人が少なく、抵抗感が強い項目だと分かります。

パーソナライズサービスは、今後のデジタルガバメントの推進力として期待されるものです。特に位置情報の活用を前提としたサービスは多く構想され、実際には、そういったサービスへのニーズは高いという結果も出ています<第2回コラムを参照>。パーソナライズサービスの実装と提供にあたっては、住民のニーズを丁寧にすくいあげながら、個人情報の利用についてもお互いに納得した形で進めていくことが大切になります。

さて、話は少し変わり、住民と自治体をつなぐメディアについての結果をいくつかご紹介します。本調査が掲げた仮説(詳しくはコラム第1回をご覧ください)における“エンゲージメント”の重要な指標になるものです。

まず基本的なところとして、自治体とのやりとりの手段として、約6割(59.4%)の人が公式ホームページ、スマートフォンアプリが望ましいと回答しました。自治体の公式SNS(LINE、Twitter、Facebook、その他)は合計して1割に届きませんでした(7.7%)。情報提供手段のマルチチャネル化は時代の流れではありますが、初心に立ち返り、公式ホームページの見やすさ、項目の整理、UI・UX(ユーザー体験)について改めて考えてみるのもいいかもしれません。

調査では、公式ホームページや広報誌などで、どのような情報を見たことがあるかどうか聞きました。

図:自治体からの情報で見たことがある項目
図:自治体からの情報で見たことがある項目

アンケート調査に先立って実施したヒアリングでも、日ごろ最もよく見るのは「ごみ出し」、という意見は多くありました。健康・医療やコロナ関連も見たことがある人が多い項目です。次いで防災・災害と続きます。今どの自治体でも力を入れている“市民協働”については、それほど高い数値がでませんでした。今後の課題でしょう。いずれも、日常生活に密着した情報が上位に来ていることが分かります。

最後に、LINE、Twitter、FacebookなどのSNS経由で使いたいサービスに関する質問についてご紹介して本コラムを終わりにしようと思います。  

ここでは、「緊急時にどこに連絡すればよいかが一目でわかる連絡帳がほしい」という項目がトップとなりました。「行政手続きを完結させたい」という項目よりも1割近く高い数値となったのは注目すべき点かと思います。

図:SNSを使って行いたいこと
図:SNSを使って行いたいこと

本コラムでご紹介したような住民ニーズをくみ取りながら、自治体と住民とのエンゲージメントを高め、住民一人ひとりの理想の暮らしに近づいていきたいです。個人情報の提供意向など正しく理解しながら、デジタルガバメントの推進につなげていただきたいと思います。

本調査について詳しくは、GLOCOMホームページ(https://www.glocom.ac.jp/activities/project/6864)をご覧ください。

● 「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第一弾

● 「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第二弾

櫻井美穂子(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
この記事を書いたのは:

ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。博士(政策・メディア)。 専門分野は経営情報システム学。特に基礎自治体および地域コミュニティにおけるICT利活用について、レジリエンスをキーワードとして、情報システム学の観点から研究を行っている。 Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。

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