【行政DX・自治体DX】行政・自治体にとってのDXとは?
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- writer : GDX TIMES編集部
行政DX(自治体DX)とは、デジタル技術を活用した行政サービスの改革です。単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を手段として活用することで、社会のあり方を変革する取り組みだといえるでしょう。本記事では、行政府にとってのDXとは何か、行政DXに取り組む背景、行政DXのおもな取り組みを紹介します。
そもそも「DX」とは
「DX(Digital Transformation)」を直訳すると「デジタルによる変容」になります。この言葉を最初に用いたのは、スウェーデンのウメオ大学のストルターマン教授です。2004年に発表した論文のなかで、「DX」を「デジタル技術の浸透が人々の生活のあらゆる面に影響を及ぼす変化」と表現しました。情報技術と社会システムの融合による変化を、社会的な視点からとらえた概念でした。
その後、デジタル技術の活用がビジネス社会に根付いていくにしたがって産業的な視点が入り込み、「環境変化に対応するために、組織がデジタル技術を活用することによる変革」という意味合いで用いられるようになります。
日本において「DX」が広く認知されるようになったのは、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」がきっかけだったといわれています。同レポートが警鐘を鳴らした「2025年の崖」を乗り越えるべく、「DX」が一気に熱を帯びて議論されるようになっていきました。
行政(自治体)にとっての「DX」とは
学術論文に登場した「DX」という言葉は、ビジネスの世界に入り込み、広く普及していくことになります。将来の環境変化に備えて競争力を強化するために、デジタル技術の活用によってビジネスモデルを変革していくという考え方が、多くの企業経営者やリーダーたちに受け入れられたためでしょう。
そもそも行政には、企業のような「ビジネスモデル」という概念はありませんが、「ビジネス」を「行政サービス」に置き換えてみると、行政(自治体)DXは「デジタル技術による行政(自治体)サービスの改革」となります。総務省は、行政(自治体)におけるDX推進の意義を以下のように定義しています。
◆デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる
◆デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく
◆データ様式の統一化・多様なデータの円滑な流通
によって、
①EBPM(統計や業務データなどの客観的な証拠に基づく政策立案のこと)による行政の効率化・高度化
②多様な主体との連携により、民間のデジタル・ビジネスなど新たな価値等の創出
を実現する
総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」
行政サービスにデジタル技術を取り入れて業務効率化を図るだけではなく、デジタル技術の活用によって、住民一人ひとりに寄り添った「行政サービスの変革」を目指していることが読み取れます。
「行政DX」が叫ばれている行政特有の背景とは
経済産業省の「DXレポート」で提起された「2025年の崖」の危機は、「DX」の推進に取り組まなければ行政府にも確実に訪れることになるでしょう。
「2025年の崖」については、「デジタルトランスフォーメーション(DX)|「デジタル化」を目的から手段へ」をお読みください。
くわえて、行政府に特有の背景としては、以下の点が挙げられます。
自治体職員数の減少
総務省によると、地方公共団体の職員数は、平成6年をピークとして対平成6年比で約52万人減少(令和2年4月1日現在)しています。減少要因としては、行政改革による定数削減、団塊世代職員の大量退職、市町村の合併などが挙げられます。生産年齢人口の減少による税収減が見込まれるため、今後も定員増加の可能性は低く、民間委託や住民との協働など、新たな公共サービスの担い手づくりの工夫が求められています。
ライフスタイルの多様化、人口構造の変化などによる課題が山積
人々のライフスタイルの多様化や少子・高齢化による人口構造の変化によって、待機児童対策や空き家対策、介護予防、鳥獣被害対策、災害対応など、自治体が抱える課題は山積しています。住民一人ひとりに寄り添ったサービス提供を実現するために、自治体職員が担うべき業務が増し、その負担も大きくなっています。
「対面」「紙」文化
コロナ渦の状況下では感染防止の観点から、非接触、非対面のサービス提供が求められるようになりました。社会全体としてペーパーレス化、オンライン化が進んでいますが、行政府においては「紙文化」が色濃く残り、いまなお「対面」での手続きが行われています。
「行政DX」のおもな取り組み
総務省は、各自治体のDX推進を加速させるために、2020年12月、「自治体DX推進計画」を策定しました。このなかで、自治体DXの重点取り組み事項として、以下の6つを挙げています。
自治体の情報システムの標準化・共通化
国はまず、各自治体が共通基盤として利用可能な複数のクラウドサービスを整備・運用します。同時に、自治体の17の基幹業務を処理するシステムについて標準仕様を定め、各自治体が構築するシステムが、この標準仕様に準拠して開発可能な環境を整備します。
マイナンバーカードの普及促進
2022年度末までに、ほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指して、マイナンバーカードの申請促進と交付体制の充実を図り、普及を加速させます。
自治体の行政手続きのオンライン化
住民がデジタル化による利便性を早期に享受できるよう、マイナンバーカードを用いての申請が想定される31の手続きについて、2022年度までに、マイナポータルの最適化に取り組み、マイナンバーカードを用いたオンライン手続きを可能にします。
自治体のAI・RPAの利用推進
自治体の情報システムの標準化・共通化、行政手続きのオンライン化による行政サービスの見直しなどを契機として、AI(人工知能)やRPA(業務プロセスを自動化するロボット)の導入およびそれらの活用を推進していきます。
テレワークの推進
コロナ渦における感染症対応のなかで明らかになったテレワークによって生じた課題とその対応策を整理した上で、テレワーク導入に向けた情報提供を行い、自治体でのテレワークを推進します。
セキュリティ対策の徹底
2020年に改定されたセキュリティポリシーガイドラインを踏まえて、自治体におけるセキュリティ対策のあり方を見直し、セキュリティ対策の徹底を図ります。
「行政DX」と一口にいっても、それぞれの自治体ごとに、取り組むべき課題があり、その優先順位は異なります。大切なのは「デジタル化」そのものではなく、地域活性、行政リソースの最大化、住民福祉など、それぞれの自治体が抱える課題をどのように解決して、地域社会にどんな新しい価値を提供するサービスを生み出せるのかという点にあります。