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2021年7月14日

届け出や申請が簡単に!市民の声に寄り添う、会津若松+(プラス)「申請書作成支援サービス」開始の狙い

「スマートシティ会津若松」を推進する会津若松市では、このたび地域情報プラットフォーム「会津若松+(プラス)」にて、市民がWebフォーム上で簡単に複数の申請書を作成する機能を実装しました。その開発の狙いとサービス立ち上げまでの背景、今後の構想などを、担当者の五十嵐様と柏木様に伺いました。

会津若松市 教育委員会学校教育課 主幹 五十嵐徹 様(右)/企画政策部企画調整課 副主幹 柏木康豪様(左)

「会津若松+」の立ち上げから担当してきた五十嵐様の異動後の後任が柏木様。長年、公共交通の分野に関わってこられた知見を活かして、スマートシティ会津若松の構想をさらに進化させていくべく奮闘していらっしゃいます。

ICT(情報通信技術)産業に着目したスマートシティ会津若松

Q 会津若松市様はかなり前からスマートシティに取り組まれていましたが、どういったことがきっかけだったのですか?

五十嵐様:調査では、国は平成20年頃が人口のピークですが、会津若松市は平成7年がピークとなっていて、かなり早い段階から人口減少が始まっていました。地方都市にとって、少子高齢化、人口減少が続く中で、いかに持続可能な都市を目指すかは大きな課題でした。

その解決の一つとして、地方でも仕事が可能な「ICT関連産業」に注目して、その集積を図っていくことにしました。併せて、ICTを活用して生活の利便性向上を図ることで、住んでいる人にとって魅力的で誇れるまちにしていくことを目指したものがスマートシティの構想です。

Q  ICT産業に注目されたのはなぜでしょうか?

五十嵐様:長い歴史の取り組みがあります。まずは昭和42年に富士通の半導体の工場の誘致をしました。ピーク時には5000人を超える雇用を生み出し、市民にとってICTが身近に感じられるきっかけにもなったと考えています。また、平成5年にICT専門の単科大学として会津大学が開学したことも大きなポイントです。

もともと江戸時代から会津藩は教育水準が高く、天文台を作って天体観測をやっていたり、日本初のプールと言われる「水練水馬池」があったり、学校給食を出したりと、教育には力を入れていましたが、4年制大学がそれまでなかったのが残念な点でした。いよいよ認可がおり、大学の学部について議論になったとき、富士通の工場があったこともあり、今後はICTが時代を担っていくことなるという結論に達し、ICTの専門の大学が開学したのです。 東日本大震災後には、持続可能な社会の構築を目指して「スマートシティ」の取組が注目されるようになりました。当時、「スマートシティ」と言えば、他の自治体では温暖化対策やエネルギー分野での取り組みが多かったのですが、「スマートシティ会津若松」は、こうした会津若松市の背景もあり、ICT産業の集積や、あらゆる分野でICTを活用して市民の利便性を向上させ、充実させていこうということを定義として進めてきました。現在は、複数分野横断型のスマートシティが主流であり、本市がその先駆けになってきたと感じています。

歴史を感じる重厚な外観が特徴の会津若松市役所庁舎。

都市OSのプラットフォームとして注目される「会津若松+」

Q  その中で、「会津若松+」が果たす役割とはどんなことですか?

五十嵐様:「会津若松+」は年齢や性別、家族構成、趣味などを登録すれば、その人にとって必要な情報をレコメンドして届けるサービスです。ICTの技術を使って生活の利便性を向上させる、まさにその基盤になります。ネーミングは今までの状態に加えて、さらにそこに追加していくという想いが込められています。特に高齢者はICTというと苦手意識が強い方もいらっしゃいますが、今ある紙媒体の広報誌を残しつつ、利用する市民の方にとってICTを活用してさらに便利なものがプラスされるということを説明しています。

「会津若松+」は、どんなホームページなら毎日開いてもらえるか、どういった記事、サービスがあればいいか検討を重ねてスタートしました。その人にとっておすすめの記事をレコメンドするような機能や、さまざまな分野のサービスがここから一元的に利用できるようにする、それも強制的ではなく、自らが希望するサービスを自らの同意に基づいて利用できるといいんじゃないかなど、議論を重ねてコンセプトを発展させてきました。

実は、その頃からこの仕組みは「都市OS」というか、分野横断的なサービスのプラットフォームになるなということは連携する事業者も言っていましたが、私自身も他の自治体の方と接する中で、この基盤をどの自治体でも使えるようにオープンにするべきではないかという思いを強く持つようになりました。他の自治体さんからの視察や、意見交換などで交流していると、皆さん似たような課題を持ち、より良いサービスを導入するにはどうしたらいいのかという悩みを抱えていたのです。

プラットフォームをオープンにしていくためには、システムを標準化する必要なども出てきますが、このシステムを導入してくれる自治体が増えることで、会津若松市にもメリットが大きくなります。他の自治体のいい部分を横展開できますし、横展開なので費用も安価にでき、お互いにとってWINWINの基盤となります。現在、奈良県橿原市などへ横展開しています。

会津若松+(プラス)

完全デジタル化じゃないからこそできた「申請書作成支援サービス」

Q  会津若松+(プラス)「申請書作成支援サービスとは?その特徴は?

五十嵐様: 自宅のパソコンやスマホで必要な子育てに関する行政手続きの届出書や申請書の作成を簡単に行うことができるサービスで、完全電子申請の一歩手前のものになります。市民の使いやすさや現状を考えると完全デジタル化に一気に進むより、そこへのステップとして「申請書作成支援サービス」が有効だと思っています。

今回は子育てに関する申請サービスを始めたわけですが、例えば、子どもが出生した後に出さなければならない申請は複数あるので、何枚にもわたって氏名や住所など同じ内容を記入しなければなりません。「申請書作成支援サービス」では、氏名や住所など項目を入力すると、必要な複数枚の書類に反映されますし、この項目には何を入力するのか、という解説が画面に表示されるので、分かりやすいと思います。市役所に来る前に自宅など場所を問わずに入力できることが特徴で、窓口での滞在時間短縮にもつながるなど時間を効率的に使えます。

紙で受け付けるので、職員のオペレーションに変更はなく、完全なデジタル化ではありませんが、デジタル化への過渡期の現状ではそれがちょうどいいと思っています。申請しなければならない手続きは複雑な面もあるので、自分はどの手続きが必要なのかをシステムで完全に案内することは難しく、漏れや誤りが出てしまうからです。その結果、再度の申請が必要になれば、「あのシステムは使いづらい…」ということになってしまいます。したがって、現時点では、デジタル申請を利用しながらも、職員が必要な手続きを支援し、漏れを防ぎ、市民にはデジタル申請の恩恵により申請書を書く手間を省けるという利便性を経験してもらえることが第一歩だと思っています。

その次のステップとして、完全なデジタル化を見据えて主な窓口業務について流れや手順を見直そうとしています。

Q 「申請書作成支援サービス」で、まず子育てに関する支援サービスを立ち上げるに至った理由は?

五十嵐様:市への手続きの中でも出産の際には、複数の申請書の提出が必要なため、氏名や住所など、何度も同じようなものを書かなければなりません。この問題についてICTを活用して解消したい、という思いがありました。

また、何と言っても出産や子育てサービスを利用する世代の方は、スマホの使用率が高いので、ターゲットを絞りやすく、そういった層に向けてシステムを開発していけばサービスを立ち上げやすくなります。システム開発の入り口として、やりやすいと思いました。

Q  庁内ではこのサービスについてどんな声が上がっていますか?

五十嵐様:実は、申請書作成支援サービスには市長も期待を寄せています。市長は、マイナンバーカードを利用した完全デジタル申請が目標だが、紙から一気に完全デジタル申請に至るには、さまざまな課題を解決していかなければならず、すぐには難しい。そのため、こうしたサービスを実践して、トライ&小さなエラーを繰り返し、修正し、いろいろな成果を積み上げていく。まずは始めていくことが大事だ、と言っています。

庁内でも共有されていて他のサービスでも検討を始めていますし、同時にBPRで業務を整理し、完全デジタル化に進めていければと思っています。

「申請書作成支援サービス」簡単な質問に答えていくだけで、子育てに関する申請書がパソコンやスマホで作成できます。

行政が目指すべきは“市民本位”

Q デジタル化していく部分も含め、今後、窓口サービスはどのように変更していこうとお考えですか?

五十嵐様:会津若松市は、市民本位を大切にしています。フィールドイノベーション活動として、職員自ら、市役所に訪れた人の滞在時間を測ったり、アンケート調査をしたりして、市民課の窓口ではレイアウト変更を複数回行っています。今後、令和7年には、市役所の新庁舎ができますので、それに向けてICTを活用した仕組みと窓口業務をどう組み合わせて刷新していくか、議論を活発化させています。

Q 今後のスマートシティ展開についてお聞かせください。

五十嵐様:私たちのスマートシティのコンセプトはあらゆる分野でICTを使って市民の利便性を高めるということですから、デジタルガバメント(市役所のデジタル化)という視点からだけでなく、市民が生活してくうえでICTを使って利便性を高められる分野のサービスをたくさん増やしていこうと思っています。

例えば、母子健康手帳を電子化したのはデジタルガバメントでありつつ、市民からみれば親と子どもの便利なサービスです。市民目線からいうと、デジタルガバメントというよりは生活の中でICTを活用して利便性を高めていくとしたほうがいいかもしれませんね。やはり市民本位でないといけないと思います。

柏木様:私は異動してきたばかりなのですが、例えば以前担当していた公共交通の分野でも、地方都市において、高齢化の中で公共交通をどうしていくかという大きな課題があります。推進していく中で問題になるのは、ICTの技術を取り入れることに対する、リアルの現場のオペレーション部分との調整です。他の分野でも同じようなことが言えると思いますので、現場の声を聴きつつ、市民の利便性を高めるという本質的な目的に向けて、現場とICTの技術を調整し、なじませながら進めていきたいと思っています。

会津若松市のシンボル「鶴ヶ城」。

Q 申請書作成支援サービスの次なる展開は?

五十嵐様:この申請書作成支援サービスを他の分野にも拡大していくことも重要ですし、もっと完全デジタル化に寄せていくことも大切と感じています。さらに、デジタル化することで、市のバックオフィス側も効率化が進み、空いた時間を市民との直接対応が必要な業務に充てていくことができると考えています。そのため、本業務の成果と、BPR業務の結果などを突き合わせながら、課題を整理し、今後のより良いサービス創出につなげていきたいです。

Q  毎日業務でお忙しいと思いますが、お休みはどうやって過ごされていますか?

柏木様:私は、昔は釣りや自転車が趣味だったのですが、娘が生まれてからは娘にベッタリです。娘に依存しているというのか、とにかく娘LOVEです!

五十嵐様:実はゲームセンターにある、クレーンゲームに凝っています!景品によって形が違うのでしっかり分析してクレーンをどの角度に動かすか、いかに少ない回数で効率よく景品をゲットできるかを考えながら楽しんでいます。おかげで腕前が上がり、自宅は景品で溢れていますよ(笑)。やっぱり分析するのが好きなのかなぁ。

●「会津若松+(プラス)」 申請書作成支援サービス

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