「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第二弾
- category : GDX レポート #サービスデザイン #スマートシティ #デジタルガバメント
- writer : 櫻井美穂子(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
リアルタイム性と自分の関心や状況に沿った情報提供に高いニーズ
本コラムでは昨年末から今年2月にかけて、(株)サイバーエージェントさんと実施した、デジタルガバメントに関する住民ニーズ調査研究についてご紹介しています。第2回では、デジタルガバメントのサービスに関する結果についてレポートします。
デジタルガバメントのサービスと一言でいっても、該当するサービスは多岐にわたりますので、この調査ではマイナンバーカード、防災・防犯、新型コロナ関連サービスの3つの観点に絞りました。加えて、パーソナライズサービスへのニーズや、自治体とオンラインでどのようなやりとりを行いたいか、というような、コミュニケーションの基本となる活動についても聞きました。
自治体からどのような形で情報がほしいかという質問では、「リアルタイム情報提供」や「非常事態に自分に必要な情報提供」を求める声が6割以上となりました(図)。別の質問(自治体とのやりとりで望ましい形態)では、行政サービスのオンライン申請を望んでいる人が5割であり、リアルタイム情報や非常事態に自分に必要な情報の提供は、オンライン申請よりも高いニーズがあることがわかりました。
今後のデジガバ推進においては、住民に対する一律の情報発信ではなく、一人ひとりの暮らしの状況や関心事項に応じて、リアルタイム性の高い情報を、必要なタイミングで提供することが重要になると言えるでしょう。
上の質問項目には、“自分や家族に必要な情報”あるいは“自分の年齢や家族構成に合った情報”というキーワードが入っています。より直接的に、自分の暮らしの状況に応じたサービス(パーソナライズサービス)があると良いかについて聞いたところ、「とても良い(26.4%)」「良い(49.0%)」との回答が合わせて75.4%となり、パーソナライズサービスへのニーズが非常に高いことがうかがえます。
パーソナライズサービスへのニーズについて「とても良い」「良い」との回答に影響を与える項目を、「お住まいの自治体が提供していると思うもの」という質問項目から分析したところ、「近隣住民とのつながりやコミュニティづくり」、「いいまちに住んでいる満足感」、「利便性のある行政サービス」という回答が、パーソナライズサービスの利用意向にプラスに影響することがわかりました(図)。人とのつながりに積極的な意向を示すオープンな住民が、パーソナライズサービスへのニーズを高く持っていると考えられます。
パーソナライズサービスは、デジガバ関連サービスの中でも今後更なる展開が期待される領域です。その推進においては、前回のコラムでもご紹介したような、デジガバのニーズを後押しするのは「自治体と住民との”心理的な近さ”である」という結果を踏まえ、自治体と住民との”心理的な近さ”を創りだしながら、生活に対する満足感や、近隣コミュニティとのつながり、助け合いの文化を醸成することが重要な鍵を握ると考えられます。
続いて、3つのサービスカテゴリーに関するニーズの結果です。防災・防犯 について、欲しいオンラインサービスを聞いたところ、「災害時における最寄りの避難所の通知(55.7%)」「最寄りの避難所の混雑状況(51.8%)」「ハザードマップ情報のオンライン化(50.6%)」の回答が5割をこえる結果となりました(図)。
新型コロナウイルス感染症対策については、「近隣で発熱外来を開設しているクリニックの案内(57.2%)」「ワクチン接種のオンライン予約やオンライン追跡調査(56.0%)」「地域の感染状況をSNSで通知(55.6%)」の回答が過半数を超えで最も多くなりました(図)。ここでもパーソナライズサービスへのニーズが高く、リアルタイム情報提供が求められていることが分かります。
マイナンバーカードについては、どのような用途であれば利用したいかを聞きました。「コンビニでの住民票、印鑑登録証明書など公的証明書の取得(57.3%)」が過半数で、次いで「住民票の住所変更手続きのオンライン申請サービス(49.0%)」「運転免許証、健康保険証として利用(48.6%)」と回答する人が多い結果でした(図)。
以上3つのサービス分野において、回答数が最も多かったのは防災・防犯であり、防災・防犯分野におけるオンラインサービスに対する期待が高いと言えそうです。防災・防犯と新型コロナ関連のサービスの利用意向がある人たちには同じ回答の特徴があった一方で、マイナンバーカードの利用意向が高い人たちにはそれとは異なる傾向があることも分かりました。防災・防犯サービスと新型コロナ関連サービスを使いたいと答えた人=マイナンバーカードの利用意向が高い人 という図式ではなかった、ということです。
デジガバの推進において、マイナンバーカードは行政サービスの様々な場面で活用が議論されていますが、その導入においては住民ニーズの詳細な把握と、マイナンバーカードの活用目的に対する丁寧な説明が必要になってくると考えられます。
本調査について詳しくは、GLOCOMホームページ(https://www.glocom.ac.jp/activities/project/6864)をご覧ください。
● 「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第一弾
● 「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第三弾
この記事を書いたのは:櫻井美穂子(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。博士(政策・メディア)。 専門分野は経営情報システム学。特に基礎自治体および地域コミュニティにおけるICT利活用について、レジリエンスをキーワードとして、情報システム学の観点から研究を行っている。 Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。