• HOME
  • GDX 事例
  • 人口6,000人、高齢化率50%をこえる小規模自治体が挑む行政DX ~ 奈良県吉野町の挑戦 ~ ②
2023年11月28日

人口6,000人、高齢化率50%をこえる小規模自治体が挑む行政DX ~ 奈良県吉野町の挑戦 ~ ②

手続き棚卸で見えたこと

北野:黒田さんは吉野町にご着任されてから、条例を作られたり、手続きをすべて可視化することに取り組まれたり、怒涛の様に進められてきたと思います。アスコエパートナーズも、手続きアセスメントで吉野町が所管する行政手続きの全庁棚卸しとオンライン化分析を実施させていただきました。人口6,000人規模の小規模自治体が全庁で手続き可視化をされるのは実に珍しい事例でした。ご予算化の背景、庁内での導入状況をお聞かせください。

黒田様:先ほども言いましたように、吉野町はデジタル先進自治体でも何でもないので、DXをやろう、と言ってもまず地に足着いたところから、まず普通に手続きのオンライン化とかやらないといけないとは思っていました。そうなると、どの手続きをオンライン化するかという議論に絶対行き着くじゃないですか。例えば高齢者が多い町なので、まずは若者が使う手続きから、とか、そのような考え方はあるとは思うのですが、そのためにはまず庁内でどういう手続きあるか分からないと選びようがないので、優先順位を決めるために手続きの棚卸をしないといけないということになり、ネットで調べたところ、アスコエさんのサービスに行きついた、という感じです。

北野:そうだったのですね。棚卸は実質職員の皆さまの協力が必要となる調査なので、それこそ先ほどお話があったような「今忙しいのにこれを書くの?」というお声も、実は現場の職員の皆さまからはあったのではないかと想像しますが、調査を進めていくときの当時の庁内の雰囲気はどんなご様子でいらっしゃいましたか。

辻中様:そのころには、職員には皆、デジタル化へ進むというイメージがありましたので、先に進むためにやらなければならないという雰囲気だったと思います。

北野:収集したデータを基に、絞り込みや他自治体比較等も含めた分析をし、重点業務フローの改善案作成をし、報告書にまとめさせていただきました。吉野町の方で、想定外の発見や驚き、これはそうだと思っていたけどやっぱりね、という再確認のようなものなど、ございましたか。

鍋谷様:まず所管する行政手続きが1700もあるんだ、多いなという印象でした。ただ、1700のうち、年間の手続き件数が0件のものが60%ぐらいあり、手続き処理件数の8割ぐらいがごく一部の業務に固まっていることがわかったので、そこをオンライン化したらものすごい成果が出るんだろうなと実感しました。受付件数で言うと、町民税や住民税関係がものすごい数でした。

北野:手続きアセスメントを実施した結果をもって、どの手続きからオンライン化していくかを選定されました。抽出・選定する際、どういった軸で決められたのですか。

辻中様:手続き処理件数が多いものや、また、アスコエさんにすぐオンライン化できる手続きも分析してもらったので、これらはすぐやっていこうと考えました。法令や条例による規制に抵触しないものや、比較的若い人たちが使うような手続きですね。オンライン化するにあたっての課題となるのは、押印だったり、添付書類だったり、もしくは決済方法の部分が壁になるものなどが多いと思いますが、そういう手続きも可視化できたので、これらの手続きは今後どう解消していこうかを検討しているところです。

手続き棚卸し支援『手続きアセスメント』詳細

組織の規模にとらわれず、業務BPRを並行して進めることが重要なポイント

北野:手続きのデータを集め、分析ができて、結果、どの住民手続きからオンライン化していくか選定ができましたが、並行して、申請受理以降の業務のBPRが進んでいかないと、結局、手続きのオンライン化自体は進まなくなる、利用されないままになる、ということがあります。人口6000人、高齢化率50%以上である自治体の現行業務の中でこの対応をどう進めるか。この課題について、吉野町とアスコエと協定を締結し、一緒に「フロントサービスとバックヤード業務DXの勉強会」をすることになりました。手続きのオンライン化と庁内業務のBPRについて、ワークショップや外部有識者に参加してもらうなどして、さらに深堀していらっしゃいます。

この勉強会のお話を伺いします。勉強会はまだ途中ですが、何か新たな発見や現場の皆様の声などがありましたか。

鍋谷様:そもそもBPRに関しては進め方などまったくわかっていなかったこともあり、どうやればいいかを知ることができたのが一番の成果だった気がします。

参加者に具体的な手続きを持ってきてもらい、ワーク形式で業務をフロー図に落とすことでオンライン化ができそうだということがわかり、具体的なイメージを持つことができました。実際にフロー図を作ってみることで課題が浮き彫りになったのだと思います。まだ全庁展開はできていませんが、できるかもしれないという可能性が見えてきたことが大きな成果でした。

北野:実を言うと、私は、ワークショップをオンラインで実施することはとても不安でした。座学ではなくてワークショップは対面でやったことはあったのですが、オンラインでしっかりできるか不安だったのですが、結果、皆さんが自分たちの作業に落とし込めたので、とてもよかったと思います。

辻中様:勉強会をやってきて、BPRできるかもという感触を持った人たちが何人か出てきたので、現場の若手だけではなく課長職などにもそういう人をもっと増やしたいですね。

黒田様:これまではDX最先端を実施している方のご講演であったりとか、条例策定であったりとか、理念的なことをいろいろ言っていた段階でしたが、それはそれでわかったけど、でも忙しいというのが現実でした。勉強会で、標準化の具体的なお話を聞いたり、ワークショップも自分たちの業務に直結するものを実感できたり、実際やってみたら、意外と簡単だったとか、こうやったら便利になるよねというのが肌感覚としてわかってきてくれた気がするのは、ちょっとした一歩かなと思います。

今思えばあのワークショップにももうちょっと課長級を入れてもよかったと思っています。実際、現場の担当がやっぱり忙しくて、動けないかもしれないので、そういうところをどう広げていくかが次の課題だと思っています。

北野:何か変えたら次に変革するのはここをやればよりインパクトをだせるだろう、というのがわかるのは、全体を俯瞰されている課長級の皆さまですよね。私は、先ほどオンラインワークショップもできた、とお伝えしたけれど、やはりこのような、新しい仕事のやり方を考えるような時間は是非対面で、一緒にワイガヤをしながら、多用な立場の視点で改善点を話し合えると、もっとインパクトが出せるなと思いました。ぜひ、お忙しいであろう課長級の皆さんも、一度経験していただくアイデアは是非実現したいですね。

勉強会を通じて様々な課題認識や解決アイデアなどの声があがりました

「吉野町行政手続オンライン化・業務BPR 勉強会経過発表」全文はこちら

これからの吉野町 ~ 自走できるDXに向けて

北野:勉強会という形で、私もご一緒させていただけてとてもありがたかったです。最後に、これからの吉野町役場のDXをどんな形で、どんなステップで進めていくのかイメージがありましたら、お聞きしたいと思います。まず、「吉野町の本庁以外にある、町内に点在している住民窓口を含めた行政DXを進めていく段取り計画があれば教えてください」。もう一つは、皆さんの個人的な夢でもよいので、また、吉野町はDXに向けて踏み出してしまっているので、「現実にできるかどうかわからないけど、本当はここまでやってみたい!」というご希望をお聞かせいただけたら、と思っています。いかがでしょうか。

鍋谷様:役場に来なくても手続きが終わるっていうのは、最終的な目標にはなってくると思います。その最終的な目標に向けて、僕の担当で言うと押印廃止しなきゃいけないっていうところですね。それには棚卸の結果も使わせてもらおうと思っています。同時にBPRも少しずつでも進めていくというのが僕の課題です。

辻中様:手続きのオンライン化という点で言いますと、今、吉野町の中にコンビニエンスストアが2つしかないんですが、今年度中に証明書を発行できるような郵便局を3ヶ所追加する計画です。今は住民票と印鑑証明しか発行できませんが、今後、税証明などへも広げていくことができると、たぶん役場に来ることも少なくなるかと。デジタルデバイドの問題もあと何年かしたらみんながたぶん使えるようになってくると想定して、手続きがオンラインで全部できるような形を目指して頑張っていこうと思います。

高齢者が多い吉野町は地理的なことも考えると、交通手段もないし、高齢者で一人暮らしという方々もさらに増えてくると思われます。デジタル化で業務も効率化されていくはずなので、今、兼務でやってる業務がどんどん手を離れていって、その分地域に関われるようになり、もっともっと近いところで行政ができたり、あるいは僕らがデジタルを使うことによって本庁とつながって何かできたり、そういう地域作り、町づくりができないかなと僕個人的には思ってるところです。

今後はそういう行政サービスの変革についても話し合っていきたいですね。

北野:デジタルツールを上手に使えるようにして、機械的にできる事務処理自体は機械に任せ、役場職員の皆さんが使うべき時間を他のことに転換することで、結果、そもそもの行政サービスの本質を考え直したりより良くしたりできる、ということですね。「行政しかできないこと」「行政だからこそ求められているサービス」を振り返るという意味でも、行政DXは大切な取組みだということを、改めて思いました。

黒田様:自分が吉野町という自治体に来て一番重要で、ネックでもあるなと思ったのはやっぱりセキュリティですね。吉野町はまだいい方かもしれないんですけど、自治体によっては自分のパソコンでそもそもネットに繋げなくて、ネットに繋げるパソコンが課に1台しかないとかいう話も聞きます。今、自治体のセキュリティ対策でいうとαモデルやβモデルなどがありますので、吉野町の地理的条件や人口分散している状況を考えて、適切な方向を検討していきたいと思っています。ただ、やっぱり限界もあると思うので、その辺は見極めながらですけど。

北野:なるほど、自治体のセキュリティ問題、三層分離と、自治体DXをどう融合させるのか、という課題ですね。情報技術分野に関して、専門知識のある人材確保も重要ですよね。今日は改めて、いろいろな確度からのお話をお聞かせいただきました。やはり、吉野町DXは、前進あるのみ、という気持ちで取り組んでいらっしゃるというのを改めて強く感じました。

デジタルの荒波から解放されて、休日は?

北野:いつも、インタビューの最後に、ご趣味や休みの日に何されているか聞かせていただいています。皆さま、いかがでしょうか。

黒田様:東京にいたときはお笑い観に行ったりしてたんですけど、今は、週末はこの辺をドライブしたり、いろいろな店に行ったりすることが多いですね。だいたい県内ですけど、和歌山に行ったりもします。

辻中様:休みの日は結構DIYしてますね。家の机を作ったり、窓がないところにサッシ入れたりとか、本格的にやってます。あとは、アウトドアスポーツですね。釣りやカヌー、アウトドアですね。カヌーは津風呂湖で乗れるんですよ。

鍋谷様:僕は釣りか大学の時に習っていたお茶ですね。茶道を本格的にやっていたので、茶碗を美術館に観に行ったりもします。新しいものよりも古いものの方が落ち着くのかな(笑)。

北野:お笑いに、お茶に、カヌー!自治体職員の皆さまとよくお話をするのですが、実は皆さま、とても多趣味でいらっしゃることを発見しています(笑)。今日は本当にありがとうございました。

「人口6,000人、高齢化率50%をこえる小規模自治体が挑む行政DX ~ 奈良県吉野町の挑戦 ~①」はこちら


吉野町が導入した『手続きアセスメント』の特徴や効果についての詳細はこちらをご覧ください。
▶ 国・自治体向け 行政DX導入支援 手続きアセスメント(行政手続き棚卸し)

「吉野町行政手続オンライン化・業務BPR 勉強会経過発表」の全文はこちらをご覧ください。
▶吉野町『行政手続オンライン化・業務BPR 勉強会経過発表』


関連記事
Top