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2023年11月10日

ユニバーサルメニューが目指す相互運用性とデータの質の向上

デジタルの時代、多くの国や自治体が情報の共有と運用の効率化を追求しています。その中で、今回取り上げたいのはユニバーサル メニューを基にした「インターオペラビリティ:データの相互運用性」と「データの質(Data Quality)」というテーマです。

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日本の行政デジタル化で私たちがよく耳にする「共通化」「標準化」というキーワードは、日本でもデジタル庁を中心に積極的に取り組まれていますが、本当にそれだけで良いのでしょうか?
改めて、私たちが理解すべきは「相互運用性」という考え方です。
これは必ずしも一つの団体が全てを決めるというものではありません。むしろ、多様な団体や組織が持つ独自のデータやシステムを、共通の基準でつなぎ合わせ、より円滑に運用するという考え方です。
この考えを具体的に理解するために、EUの例を挙げます(EUにおけるインターオペラビリティの取り組みは、前回連載のSEMICに関する記事をご覧ください)。
EUにおいて、各国は独立した政治体制を持ちつつ、データのやり取りに関しては一定の基準に従っています。すべてを共通化するのではなく、各国の取り組みの独自性を保ちつつ、データの部分での相互運用性を重視しているのです。

データの相互運用性の実現のためには、一定の取り決めによりデータを整理(構造化)することが不可欠です。
ユニバーサルメニューも、行政サービス情報に関する「相互運用性」を実現する取り組みであると考えることができます。
行政サービス情報は、基本的に構造化されていない文章として存在しています。ユニバーサルメニューは、こうした非構造化データとして存在している行政サービスに関する情報を、情報の分類・タグ付けや、説明項目の整理(コンテンツパターン)によって構造化データに変換するという部分については、利用者の皆様からも最近十分認識されるようになってきました。

しかしここでの課題は、単純な構造化だけでは十分ではないということです。構造化されたうえでの、各「データの質」という観点も必要です。これは、ユニバーサルメニューにおいては、構造化された各行政サービスの情報について、さらにその質を高めるという取り組みにあたります。

先日、ある自治体様から相談を受けました。それはユニバーサルメニューを利用して、まず既存のホームページの情報をそのままコピーし、それを加工すれば良いのかという質問でした。しかし、ユニバーサルメニューが目指す情報の整理や相互運用性の確保は、それほど単純な作業ではありません。

例えば、子育て関連のサービス情報において、「子供」、「子ども」、「お子様」、「乳児」、「幼児」といった異なる用語が各自治体で利用されています。これが意図的であれば問題ないのですが、そうでない場合、利用者の混乱を招くリスクがあります。(これは、インターオペラビリティでは、ボキャブラリー(語彙)に関する視点です)

さらに、情報の抜け漏れにも十分な注意が必要です。例えば「対象者」に関する情報を例にとると、「対象者」である要件(「居住地域」「年齢」「性別」など)が様々にあるわけですが、実は、自治体のホームページを見ると、それらの情報が明確に記載されていないことや網羅性に欠けることがまだまだ多く見受けられます。

その上で、ユニバーサルメニューでは「利用者中心:ユーザーセントリック」な情報提供を強く意識しています。これは、利用者の立場に立って、分かりやすく情報を整理し提供することを意味しますが、現状の自治体のサイトには、この点でも課題が散見されます。
例えば、読み下すには長すぎる文章や、文章の主語、述語があいまいな、利用者にとっては読みにくい文章が、まだまだたくさんあります。

このような点を踏まえると、ユニバーサルメニューが目指しているのは、単にデータの構造化だけでなく、その情報の質も高めるという点です。利用者の立場から見たときに、情報が分かりやすく、必要な情報が網羅されているかどうかが大切です。
データの品質の向上は、今後の日本のDXを進めていく観点からも非常に重要であると認識しております。

最後に、日本の現状を考慮すると、デジタル庁と地方自治体の間で、どのようにデジタル化を進めるかという議論が続いています。その中で、「標準化」や「共通化」の議論が盛んですが、それだけでなく「相互運用性」や「データの質」という視点も大切にするべきだと私は考えます。多様性を尊重しつつ、利用者の利便性を踏まえて共通の目的に向かって進む。それが、デジタルの時代における日本のデジタル行政の理想の形ではないでしょうか。

安井秀行(アスコエパートナーズ)
この記事を書いたのは:

株式会社アスコエパートナーズ 代表取締役社長 NPO団体 アスコエ代表 一般社団法人ユニバーサルメニュー普及協会 理事 慶応義塾大学 政策・メディア研究科 非常勤講師 内閣官房「新戦略推進専門調査会 デジタル・ガバメント分科会」委員 内閣官房「地方官民データ活用推進計画に関する委員会」委員 マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパン、株式会社DBMG取締役を経て、現職。企業だけでなく、行政等公的機関も含めたウェブ、マーケティング戦略関連の幅広いコンサルティングを行っている。

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