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2023年11月13日

【介護離職】「2025年問題」目前!介護離職の5割を防げるかもしれない意外な対策方法とは?

家族の介護に専念するために、仕事を辞めてしまうことを介護離職といいます。この介護離職の現状、在宅介護を選択する要介護者が増え続ける日本の事情、介護保険法の施行とその後の改正、介護保険制度、仕事と介護の両立に向けた企業内の制度利用や労働者の実像について紹介します。

10年間で約2倍に!? 介護離職の現状

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介護離職とは、要介護状態となった家族の介護のために、それまで従事してきた仕事を辞めてしまうことをいいます。もし現役世代である子が親の介護を担うことになれば、昼間はフルタイムで働き、帰ってからは介護に追われることに。このような状況が長く続くことで介護者が心身ともに疲弊し、仕事との両立が困難と感じて仕事を離れてしまうケースが増えています。ここではまず、日本における介護離職の現状について、見ていきましょう。

2017年の介護離職者は約10万人

「介護・看護」を離職理由とする割合は、全離職者の2%ですが、2010年以降は上昇傾向にあります。2017年の介護離職者は約9.9万人と、2006年と比べて約2倍に。2022年は約10.6万人とさらに増加しています。

正規労働者の介護離職者が急増

介護離職者数を雇用形態別にみると、以前はパートタイム労働者(非正規)の介護離職が、一般労働者(≒正規)よりも多かったのですが、2010年頃からその差が縮まり、近年では正規労働者のほうが多くなっています。つまり2010年頃からの介護離職者数の伸びには、正規労働者の介護離職数の増加が大きく影響していることがわかります。

介護をする正規労働者は4050代が中心

総務省の調査によると、介護をしている正規労働者の約7割が40〜50代でした。また、平成27年国勢調査(総務省)では、40〜50代が世帯主である家族の多くが、単独世帯や夫婦と子世帯であることもわかっています。さらに、国立社会保障・人口問題研究所が2018年に行った「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」では、40〜50代の家族類型は今後も単独世帯や夫婦と子世帯の割合の拡大が見込まれる(2035年時点で約3割が単独世帯、約4割が夫婦と子世帯)と予測しています。

2022年調査でわかった介護離職者の実態

2022年調査でわかった介護離職者の実態
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ここから、厚生労働省が2022年に発表した「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」の調査結果について見ていきましょう。仕事と介護の両立に関する制度の利用状況や離職後の現状、介護離職の理由などについて抜粋して紹介します介護離職しなくて済むかもしれない対策についても要注目です!

制度の利用状況|大半の制度が2割以下

全回答者のうち「離職者」が家族の介護のために利用した勤務先の両立支援制度について、比較的認知度が高いと思われる「介護休業制度」を見ても、「利用している、利用したことがある」は25.4%と、3割にも満たないことがわかりました。このほか「年次有給休暇制度(27.8%)」を除けば、ほとんどの制度が2割以下という低い水準でした。

介護離職による変化|「金銭」「心」「体」の負担増が6割強

それでは、介護離職後にどのような変化があったのでしょうか。介護離職による変化について、精神面・肉体面・経済面での負担の増減を聞いた結果が上図です。介護に専念するための離職であったはずなのに、その結果はなんと精神面・肉体面・経済面のすべてで「非常に負担が増した」「負担が増した」との回答が6割を超えています。

介護離職の理由|勤務先の問題が4割強

次に、介護のために仕事を辞めた理由をみると「(仕事を続けたかったが、)勤務先の両立支援制度の問題や介護休業等を取得しづらい雰囲気等があった【勤務先の問題】」とした回答が 43.4%ともっとも高い割合で、次いで「(仕事を続けたかったが、)介護保険サービスや障害福祉サービス等が利用できなかった、利用方法がわからなかった等があった【サービスの問題】」が 30.2%となっています。

さらに【勤務先の問題】と回答した人について、その理由をみると「勤務先に介護休業制度等の両立支援制度が整備されていなかった」が 63.7%、次いで「勤務先に介護休業制度等の両立支援制度を利用しにくい雰囲気があった」が 35.4%となっています。制度の未整備を改善し、両立支援制度を利用しやすい雰囲気づくりに取り組む必要があることがわかります。

どんな職場の取り組みがあれば続けられたか|「個別周知」が5割強

最後に、職場のどのような取組みがあれば介護離職を回避できるかについて見ていきましょう。「仕事と介護の両立支援制度に関する個別の周知」が55.1%でもっとも割合が高く、次いで「仕事と介護の両立に関する相談窓口の設置」が33.7%となっています。つまり、介護離職者の半数が「制度をきちんと知って理解していれば離職しなかったかもしれない」ということです。

介護離職を回避するためには、仕事と介護の両立支援制度について、各制度の周知を徹底し、従業員それぞれの状況に応じて、どの制度を利用するかを検討しやすい環境づくりが有効であることがわかります。また、仕事と介護の両立に悩みを持つ従業員が、相談しやすい専門の窓口を設けることも効果的でしょう。

厚生労働省が発表した「仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」では、仕事と介護の両立支援をするための企業内の制度利用がまだまだ限定的であり、制度・体制ともに多くの課題を抱えていることが判明しました。引き続き、制度の改革に取り組み続けることは不可欠ですが、まずは、熟考を重ねつくり上げてきた現制度について、「伝えること」ではなく「伝わること」を念頭に対策を練ることが、仕事と介護の距離を縮め、その両立を叶えるうえで重要ではないでしょうか。

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