進む”こどもDX”!データを活用したプッシュ型支援を実現するために必要なこと
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- writer : GDX TIMES編集部
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児童手当の拡充、出産・子育て応援交付金、誰でも通園制度、こども家庭庁ベビーシッター補助券等々の国が掲げる子育て支援、さらに自治体ごとの地域に合わせた施策、子育て分野ではさまざまな方向性や施策が示されています。自治体ごとの状況によりその実施方法も多種多様です。
そうしたなかDX推進は避けて通れず「こどもDX」「DXを活用する」という号令はかかっているものの、どのような施策ができるのか、またそれをどのように進めていけば良いのか困っている状況があると聞きます。
● 職員の見識不足で、事業者選定、仕様の検討が難しい
● DX導入に向けた一般財源の確保が難しい
といった、施策そのものの検討が難しいといった悩みや、
● 人員不足のため、なかなか進められない
● 他部署との連携がとりづらい
といった、庁内の体制に関する悩みです。
ICT利活用推進という流れのなか、母子保健分野や保育に関する民間サービスの活用が活発に進んでいますが、ひとつの家庭、一人ずつの保護者にとっての生活は、保健、保育と区切られてはおらず、会社、地域、学校も含めさまざまな環境においてどのように利用者とのタッチポイントが作られるかが重要です。母子保健、保育などの一部だけでなく、行政の区分に関わらずそれ以外も含めて必要な支援を行き届かせること、つまり行政サービス・支援があることを利用者の必要なタイミングに気づいてもらうためには、子育て支援を網羅的・包括的に利用者視点でいかに提供できるかという視点が重要です。
「支援情報をプッシュで届ける」とは
「プッシュ型」という単語はどこでも耳にするようになりました。プッシュ型とは何もICT・スマホの活用だけでなく、対面で利用者との接点を持つ施設や事業者の方々は、それぞれ既にプッシュ型の支援を実行されていることもあるかと思います。また、今は民間も行政も多種多様なアプリツールを提供しているので、アプリを利用した時などの接点を活かし、プッシュで情報を届けるといったことは今でもされています。対面の現場でも、スマホ等の利用時でも各々が得意な方法で情報を届けることができるのが望ましいでしょう。
このように支援を届ける機会は対面だけでなく、ICT活用のシーンなど増えてきています。一方「届けたい支援」が誰にでもわかりやすく、必要なものをすぐに取り出せるようになっているでしょうか。担当課のことはわかる、よく知っている人だけ知っているという状況から、誰でもすぐわかるという状況に整える必要があります。
「プッシュ型」で「支援を届ける」ためには、そもそもどういった制度・支援があるのかがわかるよう、国・自治体で横断的、網羅的に整理され、データとして活用出来なければなりません。これを利用者視点で俯瞰的に情報整備しようとしているのが、私たちの取り組みです。
たとえば、東京都では支援制度レジストリのデータ連携基盤の整備と、各サービスの提供者を通じて、支援を届ける取り組みが行われています。このように支援情報をプッシュ型で届けるために、3つ必要なことがあると考えられます。
● コンテンツをシステムでうまく使うにはどのようにするか
● 利用者に合わせてプッシュ通知をどのように行うか
● 子育て支援情報をどのように集約するか
コンテンツをシステムでうまく使うにはどのようにするか
少し唐突で、専門的な話になりますが、支援制度の情報をICTを活用してプッシュ型で使えるようにするには、機械的に活用出来るように加工する必要があります。
私たちは、「ユニバーサルメニュー🄬」という考え方を用いて、行政サービス情報を構造化・データベース化しています。「ユニバーサルメニュー🄬」とは、行政サービス情報を網羅的に整理し、それを機械的に活用できる情報整理の手法です。
例えば、支援の情報はたいてい文章で表されています。条例、要綱などに対象者や支援の内容が書かれていますが、その文章をシステム・機械で活用するには「概要」「対象者」「支給内容」など見出しをつけて構造化し、「概要」 「対象者」「支給内容」はこれとシステムで判断できるようにすることでシステムが情報を扱いやすくなります。これを私たちは部品化と呼んでいます。
利用者に合わせてプッシュ通知をどのように行うか
次に、データ活用の観点から、アプリ等でプッシュ通知を行うにはどのような方法があるかを考えます。
プッシュ通知を行うには、トリガーが必要です。トリガーとなるのは、お子さんの生年月日・年齢だけではなく、支援制度の対象が何歳かといった情報・データが考えられます。
生成AIなども出てきており情報の検索や入手のしやすさは高まっていますが、検索するにもコツが必要で、何を聞きたいか分からなければAIに答えてもらうことはできません。気がつかないことこそプッシュで通知する意味があり、通知を受け取りたい人の状況と、通知される制度の支援内容や対象条件などとのマッチングによりプッシュを実現していく手法も、まだまだ有効な方法です。
具体的には、支援制度の情報に、利用者の属性にマッチするようなタグをつけるという手法があります。タグとは、例えば商品についている値札などのように、対象物に対してそれを分類するためにつけられた、カテゴリや対象者などの情報です。例えば、児童手当であれば、[子育て]というタグ、[金銭的な支援]というタグなどがつけられます。また、対象年齢が[高校生まで]、というタグがつくかもしれません。あるいは[多子支援]といったタグも考えられます。これらはどういう分類が良いかを検討してからつける必要があります。
また、タグの活用にあたっては、利用者が欲しい情報を自ら事前に登録しておく必要もあります。特に、客観的に把握しづらい[親御さんの興味・ニーズ][親御さん自身の属性]は、民間の検索エンジンのアルゴリズムのように、任意で情報収集をするのは難しい部分があります。
上図は、支援制度に対してどのようなタグが振られているのかの具体的なイメージです。行政サービス情報に年齢や、属性、ニーズなどの利用者視点のタグを設定することで、利用者の行動やニーズに合わせた行政サービスのレコメンドが可能となります。
子育て支援情報をどのように集約するか
多くの自治体において、子育てに関する支援制度は複数の課でそれぞれ運用されています。自治体は、組織が縦割りであり、かつ約3年ごとに行われる異動によって、組織横断で情報の集約やノウハウをストックしていくということが難しいという課題は、常に耳にします。
そのため、ある対象者について、必要な情報を”漏れなく” 伝えようと思えば、数多くある多様な子育ての支援情報を網羅的に整理し、システム上で活用できるデータとして持っておくということは大変重要です。
データを活用したプッシュ型支援を実現するために
国のマイナポータルでの申請の在り方についても「必用な手続きをもれなく案内する」というプッシュ型のイメージが示されています。国や自治体内で保有する個人情報、基幹システムにある個々の利用者の情報を活用した、本当に自分にだけ届くピンポイントのプッシュについては、データ連携基盤・都市OSなどが整うことで実現できることが増えると考えられます。
一方で、タグという類型化された、いい意味で幅を持たせた個人情報に頼らないプッシュも重要です。
数多くある多様な子育ての支援情報について、網羅的に整理し、システム上で活用できるデータとして持つというのは、簡単ではありません。各省庁、あるいは庁内各課でバラバラな型で保有するデータを集め、クレンジングする作業は、実は非常に複雑です。今まさに「支援制度レジストリ」という言葉で、データの一元化が進められていますが、実用に耐えうる情報設計は、まだまだ議論がなされているところです。
行政サービス情報が、網羅的にデータベース化されて初めて、利用者の属性やニーズに合わせて、先回りしてプッシュをするということができます。行政の区分に関わらず、ひとつの家庭、一人ずつの保護者にとって必要な支援を行き届かせるために、利用者視点での行政サービス情報を俯瞰してみることが重要ではないでしょうか。