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2021年5月12日

「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第一弾

昨年末から今年2月にかけて、(株)サイバーエージェントさんと一緒に、デジタルガバメントに関する住民ニーズについて共同調査研究を実施しました。本コラムでは、調査で明らかとなった結果のエッセンスをご紹介します。

この調査は、「そもそも住民(私たち)がデジタルガバメントに求めていることは何だろう?」という問いから始まりました。DX、デジタルなど、はやり言葉のように世の中で使われていて、時に技術論(どのような技術を導入するのか)が先行しがちです。こうした風潮の中で、改めて、人々が暮らしの中で求める“デジタル”とは何かについて、行政からの情報発信や災害/コロナに対応するサービス、マイナンバーカードを使った行政サービスなどの観点から明らかにしようというのが調査の目的です。

 デジタルガバメントに関する先行調査では、デジタル導入により変化する行政の在り方について、①デジタイゼーション(紙業務のデータ化)、②トランスフォーメーション(業務プロセス変革)、③エンゲージメント(市民参加、信頼醸成)、④文脈化の4つのステージが示されています。

本調査では、この先行研究を参考にして、エンゲージメント=「自治体と住民との近さ」と定義し、人々が感じる自治体との“心理的近さ”がデジタルガバメントのニーズに影響を与えるのではないか、という仮説を立てました。同様に、私たち一人ひとりがこういう暮らしをしたい、と望む“暮らしの理想”も、デジタルガバメントのニーズに影響を与えると仮定して、調査票を設計しました(図)。

図:本調査の背景にある仮説モデル

アンケート調査に先立ち、有意抽出した20代~50代の男女8名を対象とした予備的なヒアリング調査を実施して、上記モデルに基づいた質問を投げかけて、アンケートで尋ねる質問項目を練っていきました。本調査にあたるインターネットパネル調査では、全国の4,129人を対象(マクロミルのパネル29,027人を対象とした一次サンプリングで「自治体ホームページの閲覧経験がある」と答えた回答者から、全国15歳~89歳を人口構成比に基づく割当法により抽出)に、35問の質問を聞きました。デジタルガバメントのニーズは、35問のうち、12問の設問(※)への回答から判断しています。

調査の結果、エンゲージメントについて、自分が住む自治体との”近さ”を感じるのは、「地域のイベントに参加したとき」「選挙や住民投票のとき」「災害が発生したとき」ということが分かりました。この結果が、デジタルガバメントのニーズにどのような影響を与えるのかを分析したところ、「地域のイベント(お祭りや、屋外での催し)に参加したとき」に自治体との近さを感じる、という回答項目がプラスの影響を与えていました(図)。調査前に持っていた、デジタルガバメント推進の鍵は住民と自治体との“心理的近さ”という仮説がサポートされたと言えます。

図:エンゲージメント(街との近さ)とデジタルガバメントのニーズ

次に、人々の暮らしの理想についてはどのような結果となったでしょうか。住民が求める暮らしの理想とは、安心・安全でお金の心配がなく、穏やかで充実した老後を送ることのようです。デジタルガバメントのニーズにプラスの影響を与えるのは、「災害や犯罪から守られた安心できる毎日」「お金の心配の少ない暮らし」「静かで煩わされない暮らし」であることが分かりました(図)。

図:ウェルビーング(暮らしの理想)とデジタルガバメントのニーズ

以上の結果から、「安心・安全」、「静かな暮らし」というのが、今後のデジタルガバメントを推進する上でのキーワードとなりそうです。

本調査について詳しくは、GLOCOMホームページhttps://www.glocom.ac.jp/activities/project/6864をご覧ください。

※デジタルガバメントのニーズを抽出した12の質問項目

Q1:オンライン市議さんに相談サービスの利用意向について

Q2:自治体から受け取りたい情報の形態について

Q3:暮らしの状況に応じたサービスの利用意向について

Q4:自治体ホームページの分かりやすさについて

Q5:自治体ホームページの分かりやすい箇所について

Q6:自治体ホームページの分かりにくい箇所について

Q7:自治体ホームページや情報誌で見たことのある情報について

Q8:SNSで行いたい行政サービスの種類について

Q9:LINEを起点としたサービス提供について

Q10:防災防犯のオンラインサービスへのニーズについて

Q11:新型コロナ対策のオンラインサービスへのニーズについて

Q12:マイナンバーカードを使った行政サービスへのニーズについて

● 「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第二弾

● 「住民がデジタルガバメントに求めるものとは?」調査結果 第三弾

櫻井美穂子(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
この記事を書いたのは:

ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。博士(政策・メディア)。 専門分野は経営情報システム学。特に基礎自治体および地域コミュニティにおけるICT利活用について、レジリエンスをキーワードとして、情報システム学の観点から研究を行っている。 Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。

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