どこから始める?どのように始める?行政手続オンライン化推進研究会~青森県三沢市の場合 ②
- category : GDX 事例 #国内事例 #手続・申請
- writer : GDX TIMES編集部
東北・新潟エリアにおけるスマート社会の協創を目指す法人向けデジタルプラットフォーム「よりそう東北コネクト」主催で、青森県三沢市の行政手続きオンライン化への取り組みについて、ウェビナーが行われました。
どこから、どのように手続きオンライン化に着手していくのか、三沢市の事例をぜひご参考に!
(この記事は2023年7月7日に開催された「コネクトウェビナー」のレポートです。)
【よりそう東北コネクト】
→詳しくはこちら https://tohoku-connect.cuusoo.com/
「よりそう東北コネクト」は、東北・新潟エリアにおけるスマート社会の協創を目指す、東北電力グループ発の法人向けデジタルプラットフォームです。企業・官公庁・教育研究機関などの「困りごと」「アイデア」「ソリューション」がデジタル空間でつながる場を目指しています。
どこから始める?どのように始める?行政手続オンライン化推進研究会~青森県三沢市の場合 ① はこちら
<登壇者>
三沢市役所 総務部DX推進課 月舘亮介氏
株式会社アスコエパートナーズ 取締役 北野菜穂
三沢市の「手続きアセスメント」導入の結果
月舘氏:
では、次にこの手続きアセスメントを活用し、全庁調査を行った結果についてご説明させていただきます。
全手続1,285種類のうち、個人を対象とした手続きは874種類、法人を対象とした手続きは704種類、法人以外の団体を対象とした手続きは531種類ありました。
こちらはその個人を対象とした手続き874種類をUMカテゴリ別に分類したものになります。
子育てや介護関係に比べ、突出して住まいに関する手続きが多いことがわかりました。
また、法人または団体に関する手続き813種類をUMカテゴリ別に分類したものがこちらです。
こちらからは資格・許認可に関する手続きが多く、次いで補助金と税金関係の手続きが多いことが分かりました。
続いて、手続きの年間の受付件数をまとめたものですが、この結果は、オンライン化にするにあたりとても参考になりました。
手続1,285種類に対し、年間の推定受付件数は269,429件、申請が1年を通して全くないものが400種類以上あったり、10,000件以上あるものは7種類しかないといったことを初めて知ることができました。
つまり、この7種類をオンライン化することで全手続の半数以上を網羅することができるということわかり、まずはここからと進めていこうといった目星をつけることができました。
こちらは全手続のうち、オンライン化されている手続きとその受付件数をまとめた表となります。
ご覧のとおり、オンライン化されている手続きはまだ少ないのですが、オンライン申請できる手続きでは、オンラインでの申請割合が高いことがわかり、手続きのオンライン化に対する住民の需要は大きいのではないかと推測されました。
一番多く使われている給与支払報告書で利用されているeLTAXはすでに広く認知されていて使われる方も多いのですが、他の手続きについても環境さえ整えば…とこれをみて改めて感じました。
続いてこちらは申請書等の配布方法です。
ホームページ等に申請書のデータをアップしているものの、それがPDFであるものが457種類もありました。もしかしたら、これを加工できるワードなどにするだけで、メールでの申請への対応がすぐにできるものが多くある可能性があります。
さらに、添付書類又は対面を求める手続きについて調査したところ、意外な結果が得られました。特に根拠がないのに添付書類の提出や対面での手続きを求めているものが思った以上に多く、また市の規定で定めているものも多くあり、大幅に見直す必要を感じました。
もしかしたら市役所の方ですでに情報を持っているのに書類提出をしてもらったり、必ずしも必要ないのに市役所まで来ていただいている手続きもあるかもしれません。そういった無駄なことを排除することもDXの第1歩目だと考えております。
北野:
非常に興味深かったのは、同規模の他の自治体と比較しても、三沢市の場合、電子化済みの手続きが多く、先行されている印象を持ちました。
全手続き種類数対比で見ると、オンライン申請ができるのは5%弱と少なめではありますが、そのうち実際にオンライン申請が行われた手続きは約3割もあるというのが特徴的です。
ただ、同時に1件もオンライン申請を使っていないというもったいない手続きもあり、これに対する対策を考えていく必要があるかと思います。
気になるのが添付書類の多さです。これは他自治体と比べても多めです。添付書類の根拠をお聞きすると、市の条例、あるいは根拠はないというものの割合が多いので、これは逆にアナログ規制改革のチャンスが多いとも捉えられるかと思いました。
同様に対面を必須とする根拠のない手続きが8割弱あるというデータもありましたので、これも窓口改革のいい機会と考えられそうですね。
アセスメント結果を受けての三沢市の方針
月館氏:この棚卸結果を受けた方針についてお伝えします。
先ほどご紹介した、手続きの年間の受付件数の調査結果を踏まえて、当市ではまず、
年間3,000件以上の申請があるものを、オンライン化することで効果が大きい手続きを判断し、それから手を付けていこうと決めました。
一部ですが、こちらがその詳細です。
申請件数が多いものから順番にオンライン化していこうという計画をたてて、現在進めています。
またオンライン化するには、何かしらのソリューションを利用することになりますが、
こちらについてはこのように考えています。
オンライン申請システムですが、当市では青森県で共同利用しているe-tumoというシステムを利用しています。ぴったりサービスは、このシステムと外部接続をしており、昨年度国の自治体オンライン手続推進事業で対象となった手続きについてはこのe-tumoからぴったりサービスを経由して基幹システムまでオンライン接続されるようになっています。
ぴったりサービスをメインに利用しなかった理由としましては、オンライン決済や施設予約といった機能を利用したかったからです。
次にもう1つのソリューションとしてコンビニ交付の利用です。
こちらは、住民票の写しと印鑑登録証明書の発行を今年度開始し、税証明書や戸籍証明書の発行にも随時拡大していく方向です。
3つ目は書かない窓口になります。
これについては、現在、窓口DX推進部会という部会を立ち上げ検討しているところです。
今後実施される自治体システム標準化を視野に入れ、基幹システムの大幅改修がありますが、それに付随した形での窓口業務のデジタル化についていろいろな角度から検討しております。
またこれ以外にも窓口のキャッシュレス化、職員側の業務における電子決裁システムやRPAの導入についても進めています。最終的には、申請から受付そして処分通知に加えて、決裁や文書管理などバックヤードの作業も含めて全ての事務をペーパレス化することが理想だと考えており、それがDXを進めるうえでの基本基盤だと思っています。
北野:
貴重なお話とリアルなデータのご共有ありがとうございました。
コロナの時に、行政手続きオンライン化に対して疑問を持つ方はいなくなったと思っているのですが、行政手続きって何?オンライン化って何?というところがふわっとしたまま始まっている印象を持っています。
行政手続きオンライン化の目的は、あくまでも住民が行政サービスを受けられるということ。
行政サービスの手順のなかには、住民が体験する手続きそのものをオンライン化しなくても、申請書をデジタル化するということもあるでしょうし、添付書類が必要かどうか見直すことや、手続きを調べる部分を分かりやすくするということであっても、DXと言えます。同時に、それが庁内の皆様の業務の見直しや改善にもつながるチャンスかもしれません。
オンライン化は目的ではなくて、あくまでも課題解決の手法。このことを混乱しないで進めたいですね。